【有馬記念】ミリ単位の調整でドウデュースをデビュー前から支えてきた「天才」の職人技
◆第69回有馬記念・G1(12月22日、中山競馬場・芝2500メートル) 競走馬にとっての蹄鉄は、陸上選手のスパイクに例えられる。500キロを超えるドウデュースの体を支えるのは、わずか4つの蹄鉄。その装蹄を行うのが、担当の前川助手が「天才」と信頼を置く矢野龍一装蹄師だ。 【データで見る】ドウデュースの血統、戦績 デビュー前の入厩時から受け持っている。矢野装蹄師は、当時の印象を「覚えてないんです」。しかし、マイナスの意味ではない。「何もないのが一番で、ある方がかえって心配なんです」。記憶がないのは、トラブルがなく、“普通”の爪だったことの裏返しだ。 使用しているのはノーマルな形状の蹄鉄。3~7号まで5つのサイズがあり、大きめの6か7号を、爪の状態に応じて使い分ける。6号だと、およそ縦12センチ、横12・5センチ。7号はそれぞれ約1センチ大きくなる。 蹄鉄が消耗する箇所、度合いは“十馬十色”。歩様、調教メニューで大きく変わる上、成績とも連動しない。ドウデュースは、つま先の部分が減りやすいという。また、前肢を高く上げ、深くかき込む走法のため、後肢にぶつけて傷をつくることがあった。「ぶつける範囲を気遣いながら工夫して、最小限に抑えるようにしました」。ミリ単位の職人技で脚を守ってきた。 5歳秋を迎え、装蹄中の様子にも変化が生じた。「穏やかになりましたね。危ないうるささはないです。ここに来て落ち着いたか、と思いました」。若駒時代のやんちゃぶりから成熟した姿に、目を見張る。「無事に帰ってきてくれる。それが一番です」。ドウデュースには、最強の“縁の下の力持ち”がついている。(水納 愛美) ◆矢野龍一(やの・りゅういち) 1976年4月3日、大分県生まれ。48歳。実家が中津競馬場の近くで、その影響で装蹄師を志す。中学卒業後、大井で修行し、南関、道営競馬で勤務。00年代前半から中央に移り、14年に矢野装蹄所を開業。ブエナビスタ、ソダシ、現役ではソウルラッシュなど多くのG1馬を担当している。
報知新聞社