【自動車ブランド議論】なぜクルマ好きは性能ではなく物語(ブランド)を買うのか?日本人がブランドを育てられない理由は?
日本企業は高品質ゆえにブランド戦略が疎かに
山崎 私はBMWを担当した時、ミュンヘンに行ってBMWのブランド戦略を徹底的にたたき込まれました。 田中 マクドナルドでもブランドの神様みたいな人がいて、その人がブランドの有り様を決めているんですよね。逆にトヨタアメリカの人はなぜトヨタはブランドというものを理解しないのだと私に言ってきたことがあります。 山崎 私もトヨタの南アフリカの仕事したことあるのですが、南アフリカでは日本本社がブランド戦略を全く立てないので業を煮やして独自にブランドロゴ作って戦略的にブランド構築しようとしていた時期があるのですよ。日本の自動車メーカーは品質が高かったからブランド戦略なんて考えなくても売れちゃったからそうなってしまったのでしょうね。 田中 でもそうやってブランドを疎かにしていたツケが回ってきているような気がしますね。トヨタはレクサスがひとつの転換点になったのでしょうか。シャンパングラスのCMなどうまくいきました。 山崎 レクサス立ち上げの戦略を考えたのはトヨタアメリカなんですよね。日本は当初レクサス導入には反対だった。アメリカ主導だったからブランドが一気に確立できたのです。でも2005年の日本への導入は私も絡んでいたのですが、あまりにブランドというものに対する理解がなく愕然としました。 田中洋(たなか ひろし)1951年、名古屋市生まれ。1975年電通入社。1985年海外研修員としてイリノイ大学ジャーナリズム研究科修士課程に留学。1996年城西大学経済学部助教授、1998年法政大学経営学部教授、2008年中央大学ビジネススクール(大学院戦略経営研究科)教授を経て、同大学名誉教授。日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長などを歴任。マーケティング論、ブランド論を専攻。数多くの企業でブランド戦略アドバイザーを務める。 山崎明(やまざき あきら) 1960年、東京・新橋生まれ。1984年電通入社。1989年海外研修員としてスイスIMD MBA修了。戦略プランナーとして30年以上にわたってトヨタ、レクサス、ソニー、BMW、MINIのブランド戦略やコミュニケーション戦略などに深く関わる。プライベートでは幼い頃からの自動車マニアであり、保有した車は40台以上、ポルシェが最も多い(9台)。現在はマツダ ロードスター(ND)、BMW 118d(F20)を愛用中。著書に『マツダがBMWを超える日』(講談社+α新書)がある。日本自動車ジャーナリスト協会会員。