横浜の女性刺殺 現場は都心の“死角” 記者が歩いた
JR横浜駅前の繁華街の一角で9日夜、フィリピン国籍の礒崎・アリス・ヒマオさん(57)が刃物で複数回刺されて殺害された。殺人容疑で逮捕されたのは、東京都町田市の自称無職、安藤幸生容疑者(33)。2人に面識はなく、現場はにぎやかな表通りの裏道だった。容疑者は都心の“死角”で女性を狙ったのか。翌10日、事件発生と同じ時間に記者が現場を歩いた。 【写真で見る】社会に衝撃を与えた事件 午後7時半、横浜駅西口から南西に延びるメインストリート「パルナード通り」。会社帰りの通勤客や若者らが道にあふれかえり、まっすぐに歩くのも困難なほどだ。 西口から約300メートルほどの幸川にかかる南幸橋を渡り、現場のある川沿いの道へ左折すると、急に人通りが少なくなった。近くの飲食店に勤務する20代男性は「表通りと比べて人通りは100対0で少ない」と説明する。事件後の現場で血痕のようなものを見たといい、「面識のない人が襲われたと聞いた。自分が狙われてもおかしくなかった」と不安げに話した。 事件が起きたのは9日午後7時40分ごろ、川沿いの歩道上で礒崎さんが倒れ、現場には血だまりができていたという。時折、会社員が足早に通り過ぎる程度で、たしかに人影は少ない。ほぼ毎日通勤で近くを通る60代男性は「暗いから危ない。なるべく人が多い表の道を通っている」と語る。 一方で、近くに住む高齢夫婦は事件前に現場を通ったといい「47年間、この地域に住んでいるが考えられない」と驚きを隠さない。「事件当日は雨が降っており、日曜で人が少なかったのかもしれない。許せない事件だ」と憤る。 戸部署は11日、司法解剖の結果、礒崎さんの死因は出血性ショックだったと発表した。捜査関係者によると、現場の血痕などから安藤容疑者は逃げる礒崎さんを追うように繰り返し切りつけた可能性があるという。 事件後、刃物1本を持って横浜駅西口の交番に自首した安藤容疑者。なぜこの場所を選び、見知らぬ女性を襲ったのか。戸部署は詳しい動機を調べている。【矢野大輝、宮本麻由】