種や苗のフリマサイト取引防ぐ 海外への流出に歯止め 農水省が指針策定へ
農水省は、優良品種の海外流出を防ぐため、種苗の国内流通の管理を強化する。国内向けのライセンス指針を策定し、育成者権者が苗木業者に増殖を許諾する際、販売先を農業者やJAに限定するよう促す。フリーマーケットサイトでの個人間取引を防ぎ、不特定多数に苗木が渡らないようにする狙い。 優良品種を巡っては、ブドウ「シャインマスカット」をはじめ、海外流出による経済的損失が問題となっている。近年は、新型コロナウイルス禍による家庭園芸人気の高まりで、一般の人がフリマサイトで種苗を取引する事例も増加。無断増殖が疑われる苗が売られている場合もあり、「生産現場で流出防止を意識するだけでなく、広く一般に種苗が流れないようにする必要性が高まっている」(同省知的財産課)。 新たに策定する国内ライセンス指針では、こうした取引実態の変化に対応し、育成者権者が登録品種の種苗を管理するための対策をまとめる。想定するのが、苗木の販売先を農業者やJAに限定することだ。育成者権者から苗木業者に種苗の増殖や販売を許諾する際の条件に加えてもらうことで、ホームセンターやインターネットなどでの販売に流用できないようにする。農業者やJAは、必要な本数を苗木業者に事前に予約する。 他に、悪質な場合は、警告や刑事事件化も検討するよう促す。刑事罰を受けるリスクを周知し、抑止効果を狙う。 同省は、国内優良品種の利用料を海外で得るビジネスモデルを後押しするための指針を昨年12月に策定した。利益を品種開発の原資とし、海外での無断栽培の監視にもつなげる狙いがあるが、実効性を確保するためには足元の国内でも流出防止管理を徹底する必要があると判断した。
日本農業新聞