ヒット中の映画『正体』、小説もドラマも全部履修したライターが、それぞれの良さと違いを徹底解説!
脱走したのは、日本を震撼させた凶悪な殺人事件を起こし、死刑囚となった男・鏑木。姿を変えて逃げ続ける、彼の目的は何なのか? そもそも彼は本当に犯人だったのか……? 【動画】横浜流星が顔を変えて逃亡する脱獄犯に!大ヒット中の映画『正体』予告(ほか計2本) 原作は2020年に発表された、染井為人による500ページ超の小説。その後2022年にドラマ化され、2024年に映画が公開されました。筆者はまず小説にハマり、ドラマ→映画の順に観ましたが、みんな違ってみんないい、ぜひ観て(読んで)いただきたい作品です。本記事では、それぞれの魅力を徹底的にお伝えします!
長編小説を120分にまとめた手腕が見事!映画『正体』
500ページ超の長編小説を120分の映像におさめなければいけないという制約の中で、「人を信じる」というテーマに絞り、そこにすべてを集約させたところが見事です。登場人物やエピソードが減っていたり、原作とは異なる関係性になっている点などは原作やドラマ版に先に触れていると違和感がありますが、観終えた時にはそうした違いにも納得しました。 鏑木を演じるのは横浜流星。逃走時のボロボロで汚めな風貌や、ギリギリのところで命からがら逃げていく様子がリアルです。横浜流星本人の印象として真っ先に思い浮かぶのは、キラキラしてまっすぐな澄んだ目。『正体』の主演を演じると聞いたとき、目が隠れるシーンが多いのでその点は残念だなと思っていたのですが、はじめの潜伏先ではほとんど隠されていた目が終盤のシーンでははっきりと見え、逃げた理由を語るシーンに活きていました。よりピュアさ・純粋さを感じる鏑木だったと思います。そしてこれは個人的な感想ですが、最後の潜伏先となった施設で働いているときの鏑木のビジュアルが大変よかったです。
脇を固めた俳優陣の演技も見事でした。鏑木が“遠藤”と名乗って潜伏した日雇い労働の職場で出会う和也を演じたのは、SixTONESの森本慎太郎。アイドルとは思えぬ絶妙な汚れ方で「こういう人いそう」と思わせてくれます。鏑木のことを気に入って親しくなっていく様子や、遠藤が脱獄犯ではないかと気づき怯える様子など、こちらにも心境が伝わってきました。ちなみに需要があるかはわかりませんがこの作品、遠藤と和也の入浴(というか洗い場)シーンがあります。 鏑木が次の潜伏先で知り合う安藤沙耶香を演じた吉岡里帆も、特殊な役ではないのですが純粋さや芯の強さを感じる演技に心を打たれました。また別の潜伏先で知り合い、彼に恋する酒井舞を演じた山田杏奈は今どきの若い子っぽさがあり、それぞれの役を演じる俳優陣が全体的に若い印象だったのも、テーマに合っているように感じました。