英研究者が「子どもの風邪を2日短縮する方法」を発見!家庭でできる『非常に安価で手軽な対策』
子どもが風邪をひくと、家庭全体に大きな影響が・・・。子どもたちは、年間に10~12回もの上気道感染症、いわゆる風邪を経験すると言われている。そのたびに学校を休んだり、家庭全体がその影響を受けたり、親も仕事を休まざるを得なくなることも少なくない。しかし、イギリスの研究者たちが発表した新たな研究により、この風邪の期間を2日短縮できる「非常に安価で簡単な方法」が明らかになった。その鍵となるのは「生理食塩水の鼻腔スプレー」である。 〈写真〉英研究者が「子どもの風邪を2日短縮する方法」を発見!家庭でできる『非常に安価で手軽な対策』 ■生理食塩水の鼻腔スプレーが風邪を2日短縮 この研究はエディンバラ大学のスティーブ・カニンガム教授率いるチームによって行われた。研究によると、子どもに高張生理食塩水(塩分濃度が2.6%の生理食塩水)を鼻にスプレーすることで、風邪の期間を平均して2日短縮できることが確認された。通常の治療を受けた子どもたちが風邪の症状に8日間悩まされたのに対し、生理食塩水スプレーを使用した子どもたちは6日間で回復した。この生理食塩水スプレーの効果は風邪の症状を緩和するだけではない。家族内の感染リスクも低下させることがわかった。生理食塩水スプレーを使用した家庭では、46%の家庭でしか他の家族が感染しなかったのに対し、通常のケアを受けた家庭では61%の家族が感染した。 ■生理食塩水スプレーが風邪を短縮するメカニズムとは? 生理食塩水スプレーがどのようにして風邪を短縮できるのか、そのメカニズムについても解明が進んでいる。鼻腔や気道の粘膜を構成する細胞は、ウイルスに対抗するために次亜塩素酸を生成する。この過程で重要なのが生理食塩水に含まれる「塩化物イオン」だ。生理食塩水スプレーを使用することで、これらの細胞に追加の塩化物を供給し、より多くの次亜塩素酸を生成させ、ウイルスの増殖を抑制する。この結果、風邪の期間が短縮され、症状も軽減するのだ。 ■「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」といった呼吸時の喘鳴を減少させる 今回の研究は、欧州呼吸器学会(European Respiratory Society)の学会で発表される予定である。この研究のもうひとつの注目点は、生理食塩水スプレーが子どもの「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」といった呼吸時の喘鳴を減少させる可能性があるという点である。初期の結果では、生理食塩水スプレーを使用した子どもたちのうち、喘鳴を経験したのはわずか5%であったのに対し、通常ケアを受けた子どもたちの19%が喘鳴を経験していた。研究者たちは、この喘鳴に対する効果についても今後さらに詳しく調査を行う予定だ。この簡単で安価な方法は、子どもの風邪による家庭全体への影響を大幅に減少させることができるため、経済的な負担も軽減されると期待されている。 今回の研究では、生理食塩水スプレーを使用した親の82%が「子どもの回復が早くなった」と報告しており、81%の親が今後も同じ方法を使用すると回答した。また、研究者たちは生理食塩水スプレーを作る方法と使用法を親に教え、その結果、自宅でも安全に使用できることが確認された。これにより、親たちは風邪が子どもや家族に及ぼす影響をある程度コントロールできるようになった。 生理食塩水の鼻腔スプレーが、子どもの風邪を短縮し、家族への感染を減らすという研究結果は、非常に有望である。風邪の治療には長い間、対症療法しかなかった中で、このような簡単で安全、かつ効果的な方法が発見されたことは大きな前進だ。風邪による日常生活への影響を減らし、子どもたちの健康を守る新しい手段として、今後この生理食塩水スプレーが世界中で広く普及することが期待されている。 出典: Saline nasal drops reduce the duration of the common cold in young children by two days Researchers discover ‘extremely cheap and simple’ way to shorten children’s colds by 2 days 文/山口華恵
山口華恵