問題は「AIに奪われる仕事は何か」ではない! 一生稼ぎ続けられる「π型人材2.0」になるためのステップ
<スキルの「賞味期限」はたった4年? 石角友愛さんが語るChatGPTで「一生稼ぎ続けられる人」になるためのキャリア戦略>
「4to4」=「4年かけて学んだ知識で4年働く」。これは、シリコンバレーでは、AI時代のキャリア形成の核となる考え方だといいます。『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』は、今後求められる「π型人材2.0」になるための効率的なリスキリングのプロセスを体系的に紹介した画期的な一冊です。 ●日本だけ給料が上がらない謎…その原因をはっきり示す4つのグラフ 著者は、パロアルトインサイトのCEOでありAIビジネスデザイナーとして活躍する石角友愛さん。「学びのプロ」になり、望むキャリアを実現していくための道筋をお聞きします。(※この記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です) ■「AIに奪われる仕事、安泰な仕事」という議論は枝葉にすぎない ──石角さんが『AI時代を生き抜くということ』を執筆された背景は何でしたか。 2022年のおわりにChatGPTの登場が話題を呼びました。以前から、生成AIの技術やサービスが登場するたびに、「AIに仕事を奪われる危険性が高い職業は何か?」といったファイナルアンサーを求められる機会が多くなってきたんですね。ただ、ChatGPTの一ユーザーとしても、企業にAI導入やDX推進をする経営者の立場としても、この職業が危ない、逆にこの職業は安泰というものはないと感じていました。AIは、業界・職種・役職を問わず、仕事の仕方や価値基準、もっというと人生の歩み方まで、様々な出来事の優先順位を変えていくものだと思っています。 ──人生の歩み方にも変化を与えるのですね。 たとえば、グラフィックデザイナーがAIを活用してインスピレーションを得る部分を効率化できたとします。その分、クライアントと話す時間が増やせるようになったら、今度は外国人のクライアントが多くなってきた。だから英語を勉強して留学も検討しよう、といったシナリオが考えられます。こんなふうに、AIの活用を機に行動様式が大きく変わっていく可能性を感じています。 数年前は、日本政府が「DX人材をめざすなら、Pythonを学んでおくと安心」と推奨していました。ですが、ChatGPTの登場で、この前提条件は揺らぎはじめています。現在は、エンジニア80人でやっていたことがGitHub Copilotを活用すると8人のエンジニアで対応できるようになるとまで言われ始めた時代です。現にGAFAMは人材を大量にレイオフしながらも業績を伸ばしています。 こうした現実のなかで、「どの仕事がなくなるか、安泰か」は枝葉の話であって、もっと根源的な問いは、ChatGPTのような技術が次々に出てくるなかで、どんな人材になるべきか。ゲームのルールが都度変わり、自分自身も変容し続けることを大前提に、どんなキャリアを歩んでいくのか。こうしたことを考える際に本質的に役立つ本を書きたいと思い、本書の執筆に至りました。 ──「π型人材2.0」になるための「LEARN+Aステップ」の肝は何ですか。 まず「π型人材2.0」とは何かというと、強みとなる専門分野を複数持ち、それらをつなぐ広い視野を備えている人を意味します。それをさらに進化させて、自分のスキル(ドメインスキル)に相乗効果をもたらすような新たなスキル(スパイクスキル)を掛け合わせ、統合していく。これを継続している人材を「π型人材2.0」と名づけました。 「π型人材2.0」に向けてスキルを身につけるステップが「LEARN+A」ステップです。図にあるように、Let go(前提条件を手放す)、Evaluate(スキルセットを評価する)、Analyze(選択肢を分析する)、Roll out(リスキリングを実行する)、Negotiate(リスキリング後に大事な条件を交渉する)という5つのステップから成り、最後のAはAssociative Thinking(ドメインスキルとスパイクスキルを統合する力)にあたります。 どのステップも大事ですが、あえていえば2番目のステップEvaluateと、最後のAssociative Thinkingが特に大事。Evaluateは、自分のスキルセットを可視化して、評価するステップ。自分の役職やプロジェクトの名称は言葉にできても、培ってきたスキルを言語化するのはなかなか難しいものです。こうしたスキルセットをリスト化していくときにおすすめなのが、ChatGPTの活用です。 ChatGPTに「自分のドメインスキルを棚卸しするプロンプト」とともに、過去の役職や職歴、条件を入れると、ChatGPTがドメインスキルを出力してくれます。プロンプトの具体例は本書に譲りますが、試した方からは、「自分はこんなスキルを身につけていたのか」という声をよく聞きますね。驚くような結果が出ることもあるようです。