春風亭昇羊さん、柳家小ふねさん ごひいき願います!
デジタル時代だが、落語がブームです。講談・神田伯山や浪曲・玉川奈々福の活躍もあり演芸も元気がいい。チケット入手が困難な人気者も相当数います。この勢いに続けと、若手でも有望な芸人さんが多く登場してきました。彼らに注目しているひとり、落語・演芸を長く追い続ける演芸写真家・橘蓮二が、毎回オススメの「期待の新星たち」を撮り下ろし写真とともにご紹介いたします。 【全ての画像】春風亭昇羊、柳家小ふねの写真ほか(全11枚)
「発信と受信」──春風亭昇羊
優れた表現者は発信力より受信力が勝っている。最終的にはどう出力するかだが、そこに至るまで何を感じどう思考し準備してきたかが問われる。ここ最近、春風亭昇羊さんの活躍がめざましい。前座時代から目を引く持って生まれた華やかな空気を纏った明快な高座の上に強度が加わりお客さまを惹き付ける落語の吸引力が一段と上がっている。 子供の頃からお笑い好きであったが落語に触れる機会は皆無でその存在も意識したことはなかった。高校卒業後、あるお笑い芸人が演じた古典落語をアレンジした高座を観たことが元々お笑い表現に関わりたいと思っていた気持ちとシンクロ、新作落語を創り演じたいとプロを目指すことになる。しかし落語に関しての知識はゼロに等しい。そこで【落語・面白い】で検索し最初にヒットした春風亭昇太師匠に弟子入り志願するという今考えるとだいぶ無茶な行動であった。それでも何度も粘り強く通い続け2012年5月に六番弟子として入門を果たす。まる4年の前座修業を終え2016年5月二ツ目に昇進した。 これまでの経緯を伺っている中で前座時代を振り返り「傲っていた当時の自分は嫌い」の一言が強く印象に残った。具体的に何があったとハッキリとしたキッカケは分からないがその後知らず知らずのうちに落語家としての有り様が大きく変化していった。当初は新作落語家に成るべく自身の創作落語を演じていたが、次第に人生を右往左往と惑いながら懸命に生きる人の営みが生み出す切なさや滑稽さといった豊かな感情が詰まった世界観に気持ちが向かい現在は古典落語を演じることに重心を置いている。兄弟子の元に毎月3回1年間に渡り通いながら古典落語の基礎をみっちり稽古するなど地道な努力を重ねてきた。 さらに怠ることのない実践の中で培った高い感受性により落語と聴き手である観客、そして自身の心の置き方がとても綺麗なバランスを保っている。演じ方や根多のチョイスなどお客さまにどうすれば物語の面白さを壊さずに届けられるかを常に考え続ける謙虚で直向きな姿勢が高座から伝わってくる。そこには集団行動が苦手で目の前の事象に対して如何なる時も個で見極め立ち向かってきた者が持つ強さがある。“孤独”と“寂しい”は全く別物。ひとりで立つことができる(受信の感度が高い)からこそ他者と共感(多く発信)することができる。繊細で大胆、冷静で熱い昇羊さんの落語には深い奥行きと美しいコントラストを感じる。