「柔らかい食べ物」が好きな日本人、「柔らかい食感」を嫌がるアメリカ人、…「食の好み」はここまで違った
日本の「柔らかいパン」が恋しくなった
筆者が以前目にしたネット上のスレッドで、同じ海外在住者として妙に納得したものがある。その記事はドイツ目線で「なぜ日本人は柔らかいもの=美味しいと思うのか」と問うものだった。そう言えば先日、渡米したばかりの日本人の知人が「アメリカのパンは硬いから口に合わない」と言って、日本の食パンやコンビニのサンドイッチを懐かしがっていた。 【写真】日本人が知らずにしている「アメリカの飲食店」で「やってはいけないこと」 この知人に代表されるように、一般的に日本人は柔らかい食べ物を好む傾向にあるかもしれない。片やアメリカ人は...? 必ずしも「柔らかい=美味しい」ではないようだ。 周囲のアメリカ人を観察すると、彼らは柔らかい食べ物(もしくはネバネバ)が好きどころか逆に苦手意識があるようだ(もしくはそれらの食べ物にあまり関心を示さない)。もちろん個人的な好みがあるのであくまでも一般論として聞いてほしい。それを前提に経験談を交えてここではシェアする。 筆者が友人とある日、アフリカ料理を食べに行った時のこと。エグシスープ*という西アフリカの料理を初トライしてみたのだが、友人はその柔らかくてねっとりとした食感が口に合わず、一口含むなり顔をしかめて「スライミー(slimy)」と言って食べるのを止めた。そう言えばひと昔前、お好み焼きや納豆にトライして吐き出した別の友人のことを思い出した。 *エグシの種子を細かく砕いて肉や干し魚、野菜を加えた西アフリカ料理
ハード系のパンが好まれるワケ
市場に出ているものや商品の普及度はそれぞれの国民の味や食感の好み、嗜好を反映しており、その国で需要があるもの、つまりよく売れるものこそ消費者の手に届き易い。市販のパン一つとっても日米で売れ筋商品は異なる。 日本のスーパーやコンビニで販売されている多くは、ふわふわで柔らかい食パンや菓子パン、サンドイッチなどの調理パンが多い。どの商品も「ふわふわ」「耳まで柔らかい」などというキャッチコピー付きで陳列されている。おしゃれなパン屋さんでハード系のパンやもっちりとした本場ニューヨークスタイル*のベーグルなどが売られているが、数は圧倒的に限られるだろう。 *日本で売られているベーグルはソフトタイプ(もはやベーグルではない)。何度も噛まないと飲み込めない本番のベーグルに至っては日本でまったく根付いていない 片やアメリカのスーパーには、押し潰すとぺったんこになるほど柔らかくてふわっと軽い日本の食パンはない(近年は日系スーパーなどで手に入るようになったが一般的ではない)。 この国では柔かさ重視ではない普通の食パン、ベーグル(特にニューヨーク)、ハンバーガーやホットドッグ用のバンズが中心だ。高級志向のスーパーではハード系のパン、つまりヨーロッパ由来のバゲット(フランスパン)やサワードウ、ナッツやドライフルーツ入りのパンなどもある。筆者はアメリカ移住後に後者のような重量のあるハード系パンをよく食べるようになった。オーブンで焼くと外側がカリカリと香ばしく、また噛み応えがあって本当に美味しい。 アメリカ人はハード系のパンやベーグルに代表されるように「噛む」「噛みしめる」行為そのものを楽しむ。押しつぶせばペッチャンコになるほど柔らかすぎる日本の食パンは胃にたまらずすぐ空腹になり、アメリカ人には食べた感じがしなくて物足りないのだ。柔らかすぎるパンがアメリカで普及しないのはそんな理由からだろう。