都知事選〝女傑対決〟は危機対処で明暗 米大統領選に最も近いメディア選挙〝蓮舫ショック〟を逆手に小池氏「らしさ」健在
【新田哲史 東京都知事選・大情報戦を斬る!】 「小池都政をリセットするために、私は立ちます」 【写真】「最近問い合わせが多い」という蓮舫氏のグラビア写真集(1989年発売) 2024年の東京都知事選(20日告示、7月7日投開票)は、立憲民主党の蓮舫参院議員(離党済み)の出馬表明(5月27日)で、一気に劇場化した。 ともにニュースキャスター出身で、知名度抜群の小池百合子都知事と蓮舫氏。くしくも8年前、ネット情報戦の視点から2人を分析した『蓮舫vs小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックスPLUS新書)を上梓した筆者としては、予想(期待?)に違わず白熱する情報戦を連日分析してきた。 〝蓮舫ショック〟は、さしもの小池氏でも想定外の事態だったようだ。当初、5月29日の都議会定例会初日と伝えられた3選出馬表明は見送りになった。続く、港区長選(6月2日投開票)では、自民、公明推薦で6期目を目指した現職が、無所属新人の野党系前区議、清家愛氏に競り負けた。一時は「小池氏が出馬を見送る可能性も出てきた」(自民党都議)との見方すらあった。 だが、そこは小池氏だ。ピンチを逆手に取り始めた。 区長選から一夜明けた早朝、清家氏に早速アプローチした。都庁に招き、報道陣の前で祝意を伝えた。会談はわずか2分。日頃付き合いのない新人当選者を正式就任前に急遽(きゅうきょ)呼ぶこと自体が異例だ。都区の連携を確認するという「建前」の裏で、自身の都知事選出馬をにらんだ政治的「本音」を含んでのことは明らかだった。 さまざまな解釈はあろうが、例えば清家氏の〝清新〟さを取り込んで無党派層にアピールしつつ、都内地方選で連敗続きの自民党に対しては「一定の距離を取る」というメッセージにも見える。逆風の時に、当意即妙な演出で乗り切る「らしさ」は健在だった。 他方、初動は良かった蓮舫氏だが、その後は「共産党との接近ぶり」が目立ち、中道層や無党派層の取り込みに不安が生じた。さらに、蓮舫氏は2日、JR有楽町駅前で「七夕に予定されている都知事選に蓮舫は挑戦します。みなさんの支援をよろしくお願いします」と述べたことで、公職選挙法で禁じられている「事前運動」の疑いを招いて迷走した。その後、陳謝での「損切り」もなく、苦手な危機対処は「二重国籍」問題当時から成長していないようにも感じる。 政策後回しのパフォーマンス合戦には辟易(へきえき)するが、都知事選は米大統領選に最も近いメディア選挙であるが故の「病理」をはらむ。