また、いつかどこかであふれるテレビ愛を 全方位ch
2021年7月に始まったこのコラムは本日が最終回。記者たちが交代で執筆してきたが、私の場合は偏執的な内容にもかかわらず、一部読者から「お(圭)はん」と呼んでいただいたことに感謝を申し上げる。思い出深いコラムをいくつか振り返ってみたい。 BS12トゥエルビの音楽?番組を取り上げた「『ザ・カセットテープ・ミュージック』の閉店を惜しむ」(2021年9月4日)は番組のファンがXで涙マークを付して記事をシェアしていただいたが、番組は復活。私が世界中の雨よりも流した涙を返してほしい。いや、うれしい。 「のど自慢 生演奏の担い手たちにも刮目せよ」(2023年3月18日)では、のど自慢の生演奏を支えるバンドメンバー、特にギターの館村雄二さん、シンセサイザーの葛西暉武さんに注目をなどと書いた。翌月、番組のリニューアルで生演奏が消える。波間を漂う難破船になった気分だった。 このコラムは番組批評というより、視聴者と同じ目線に立ち共感を育むことを本旨としてきた。それを思い起こしたのが「不思議に劇的な宮舘涼太のダンス」(2024年6月29日)だ。 TBSテレビ系「それSnow Manにやらせて下さい」のダンス挑戦企画の宮舘さんの表情と能楽師、観世寿夫の言葉を結び付けたが、読んでくれたファンの反応が温かくて。本コラムの本旨をこの手で守り抜く、絶対に―と誓った(それから半年で終わって申し訳ない)。 反応といえばコラムに取り上げた人から手紙が届いてしまったことがある。「NHK解説委員・池畑修平氏の静かなる自我」(2022年9月24日)の池畑さんである。郵便物の中に、池畑さんがキャスターを務めていた頃の「国際報道」の写真はがきがあった。現在はNHKを離れフリーとなった池畑さんからだった。はがきを読むと今も光る風の中で聞こえてくる、ちょっと髪の毛がはねた姿の池畑さんの解説が。 NHKの三輪誠司解説委員の、IT分野における底知れぬ雰囲気について書けなかったのは悔いが残るが、SNS上のさまざまな反応から、会ったこともない(会いに来た池畑さん以外の)読者とつながりを感じられたコラムだった。 さよならは再び会うまでの約束とされる。それは遠い約束だが。(圭)=おわり