世界の肥満人口は10億人、子どもにも悪影響及ぼす「間食のリスク」
米国で暮らす成人は毎日、間食で食事1回分のカロリーを摂取している。2023年10月にPLOS Global Public Healthに掲載された研究論文で明らかになった。 この研究は、30歳以上の米国人2万3000人以上を対象にした『米国全国健康・栄養調査』で得られたデータを分析したものだ。同調査は、24時間思い出し法(調査日前日の食事内容を聞き取る調査手法)を用いて、10年間にわたって実施された。 研究論文によると、米国人が間食を通じて摂取するカロリーは1日平均400~500キロカロリーで、これは成人の平均カロリー必要量の約4分の1に相当する。その上、口にした間食の大半には、健康に良い成分がほとんど含まれていなかった。最も一般的な間食は、炭水化物や脂肪分が多く含まれている食品や、甘いお菓子、アルコール飲料だった。 間食は、バランスの取れた食生活の一部にもなり得るが、間食の取りすぎは公衆衛生にとって深刻な脅威となりかねない。前述の研究でも示されているように、一般的な間食は、糖分や不健康な脂肪分を多く含んでおり、全般的な栄養状態にはほとんどプラスにならない。こうしたタイプのカロリーをずっと摂取していると、体重が増加する可能性がある。間食問題は、ほぼ間違いなく、米国における肥満蔓延の一因なのだ。 米国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所のデータによると、米国では成人5人中2人以上が肥満だ。世界全体では10億人以上が肥満とされている。私たちの社会がこうした肥満問題に積極的に取り組み、栄養や食生活、運動についての知識をより効果的に広めない限り、肥満者数は増え続けるだろう。 米国では、糖分の多い間食が定番だが、それに代わって、果物や野菜といった、より健康的な食品を間食とすべきだ。
糖尿病発症者の30%から53%が肥満
間食による体重増加はまた、高血圧や糖尿病、心臓病など、さまざまな慢性疾患の一因にもなる。例えばアメリカ心臓協会によると、毎年の糖尿病新規発症者の30%から53%が肥満と関係している。こうした慢性疾患のほとんどは、ライフスタイルの改善と、食生活や運動を重視した選択によって予防することが可能だ。 さらに、不健康な間食は、子どもや青少年の健康にも計り知れない影響を及ぼす。子どもも大人も、間食が習慣となっている場合が多い。特に子どもは、テレビを見る時などに間食しがちだ。子どもはまた、テレビで不健康な菓子の広告を目にし、それが間食を選ぶ際の選択を左右する可能性がある。 米疾病予防管理センター(CDC)によると、米国では、子どもと青少年の1500万人近くが肥満だ。不健康な間食という全米的な風潮に対処しなければ、この数字は今後ますます増えていく可能性がある。 最後にもう一つ。糖分や脂肪分を多く含んだ間食を食べていると、歯の衛生もリスクにさらされる。例えば、糖分の多い菓子は、口腔内の常在菌にとっての栄養だ。そうした細菌は、口腔内で糖分を分解し、歯垢形成の一因である酸をつくりだす。歯垢が残ったままだと、いずれは歯に穴が開き、虫歯になってしまう。 不健康な間食は、私たちの全般的な健康とウェルビーイングに深刻な脅威となり得る。しかし、栄養的に優れた食品を選べば、間食がバランスの取れた食生活の一端を担うことも可能だ。そうした食品には、全粒粉や果物、野菜などがある。 より健康的な間食を意識的に選ぶよう人々に促すことは、米国における間食問題の取り組みを後押しするだろう。例えば学校や職場などで、より健康的な間食が選べる環境を整えたり、幼いころから、健康的な間食習慣を身に着けるよう教育するということだ。親や子ども、教育機関、食品メーカーが力を合わせて取り組めば、米国の風潮が一変し、健康的な間食習慣が育まれる可能性がある。
Omer Awan