刀剣のまち・福岡県大牟田市 刀工集団「四郎國光」で日本刀の試し斬りを体験
いよいよ試し斬りに挑戦する。小学校から高校のときまで剣道をしており、腕には多少の自信がある。しかし真剣を手にすると、ずしりと伝わる“重み“に気おされた。信仰や儀礼に用いられ、日本の伝統美が凝縮されている一面を理解しつつも、武器として多くの血を流してきた歴史を思うと、畏怖に近い感情が湧き起こる。 小宮さんの丁寧な指導を受け、20回ほど素振りを繰り返す。「よし、やってみます」――。教わったことを反すうし、刀を振り下ろした。しかし畳表は半分ほどしか切れていない。「えっ、どうして?」。さらにチャレンジするが、うまくいかない。
剣道や居合の経験がある人の方が苦戦するのだという。握り方、振り下ろし方、体重の運び方、どれも剣道とはまるで違う。「やわらかく、上から刀を下ろすことだけ考えて」。その言葉通りに、いざ――。3度目にしてようやく畳表が地面に転がった。その断面は不規則に波打ち、”斬った感覚がない”にはほど遠かった。
「死ぬまで修業です」
一振りの刀を作り上げるのに半年ほどかかるという。ようやく99%できたというとき、刃に不純物が混じっていることに気づいたり、細かい傷が見つかったりすることも。いったん形成したら修復はできないため、ちゅうちょなく処分するそうだ。
「何年くらいで一人前になれますか?」。刀剣作りに携わって40年以上という小宮さんに尋ねてみた。 すると「まだ一人前じゃないけんね」と笑顔が返ってきた。「いいものができた」と満足した刀でも、翌日には「できが悪い」と感じることもあるという。「一生、納得いくものができるかどうか分かりません。死ぬまで修業ですよ」 試し斬り体験の料金は、鍛冶場の解説などを含めて1人3300円(3人以上の場合)から。1週間前までに予約が必要だ。
読売新聞