想像しただけでどうにかなりそう…34歳LDH俳優の「男と男の官能のダンス」が大期待なワケ
「ワルツ王」として心をとろかす
優美とか官能とか、とにかく抽象的な形容でどんどん彩られていく本作だが、レハールのオペラ曲に合わせて踊る町田が画面上で躍動することで、それらが具体化されなければ始まらない。 町田が演じる杉木信也には、「至高のダンサー」や「帝王」など、いくつか異名がある。とっておきが「ワルツ王」。ワルツを得意とする世界的競技ダンサーに対するこの上ない称号を意味している。 クラシック音楽の世界にもかつて「ワルツ王」がいた。レハールより前の時代に活躍したヨハン・シュトラウス2世である。「美しく青きドナウ」など、誰もが知るワルツ曲を書いた作曲家である。 シュトラウス2世のすごいところは、それまでの踊るためのワルツ曲をコンサートなどの上演でも耳にたえうるものにしたこと。本家「ワルツ王」の偉業にならうなら、杉木役の町田啓太には、単に華麗なだけでなく、「ワルツ王」として見る者の心をとろかすだけの求心力と説得力が絶対条件になる。
手だけで全身の美麗を伝えてしまう才能
我らが町田啓太ならば、まったく問題ない。彼の存在自体がすでに「ワルツ王」の条件を満たしている。その上であとはどう杉木役の優美さを細部にまでとろかして行き渡らせるかである。 上述したように、冒頭でワルツを踊る場面が本作の優美さの起点になると思われるのだが、ワルツを踊る町田啓太の寄りと引きの絵が交互に切り替わるたびに、彼の首すじ、指先、腰元、あらゆるところからあふれる色っぽさが、つややかに可視化されるんじゃないか。想像しただけでとろける。 優美を具現化したような町田は、身体のパーツごとに神経をはりめぐらせて演じられる人である。筆者の中では特に忘れがたい『スミカスミレ』で町田が演じた真白勇征役が、第1話で最初に印象づけたのは手だった。バス車内の場面で、顔や全身が写らずとも、手だけで全身の美麗を伝えてしまう才能。『10DANCE』ではこうした細部をさらに練磨して丁寧に重ねることが重要になるはずだ。