「指よ動け」イメージすると脳波捉え装具から電気刺激…脳卒中患者向けリハビリ機器「BMI」
脳卒中で手や指に後遺症が残る患者の治療につなげようと、鹿児島市西別府町の田上記念病院が、脳科学と人工知能(AI)を融合させたリハビリ機器を導入した。「医療用BMI(ブレーン・マシン・インターフェース)」と呼ばれるもので、導入は九州の病院では初めて。手指を動かしたいと考えた時の脳波を捉え、筋肉を電気刺激することで効果的な回復が見込まれるという。(小林未南)
「リラックスしてくださいね」。同病院で6月上旬、患者へのリハビリを支援する理学療法士や作業療法士ら12人が医療用BMIの使い方を学んでいた。ヘッドセットを装着した参加者が脳波を確認しながら集中すると、脱力した指先がゆっくりと上がった。理学療法士の豊見本数磨さん(22)は「ひじの筋肉を収縮させるイメージを持つと、ビリビリとした感覚とともに指が上がった」と話した。
医療用BMIは慶応大が研究し、同大発のスタートアップ企業「LIFESCAPES」(東京)が6月から販売を始めた。脳卒中による後遺症で手指がうまく動かせない患者向けに作られ、頭にヘッドセット、手に電動装具を装着して使用する。
患者が「指よ、動け」などと筋肉の運動をイメージすると、脳波を読み取ったヘッドセットが損傷した脳部位を使わない神経経路を活性化させる。それと同時に電動装具が手指に電気刺激を送り、指先の運動を促す仕組みだ。
脳波のデータはタブレット端末に送られグラフ化される。指を動かす運動時と、リラックスする安静時の脳波の振幅具合などが可視化でき、患者にはデータを見ながら運動時の感覚をつかんでもらうという。
同病院リハビリテーション部の川上剛部長(46)は「(医療用BMIで)手指を動かすイメージをつかんでもらうことで、いろいろなリハビリにつなげていきたい」と期待を寄せる。
LIFESCAPESの林正彬・執行役員(29)は「医療用BMIによる脳からのアプローチで重度のまひを治療することができるようになった。今後も機器を必要とする患者や医療従事者に届けたい」と話した。