阪神大谷攻略の裏に3m前打撃練習
阪神が日ハムの大谷翔平(20)に今季9試合目にして初めて土をつけ連勝を7で止めた。0-0で迎えた4回。柴田、マートンの連打で作った無死一、三塁が、ゴメス、福留の連続三振で二死に変わったが、消えかけたワンチャンスに上本が、この日、ただ1球だったと言ってもいい大谷の失投(フォークのコントロールミス)をセンター前へ運んだ。 上本が「相手がいいピッチャーだったので、無我夢中で来たボールに必死に食らいついただけ」と言う一打。その“虎の子”の1点をメッセンジャーが8回2安打無失点、最後はオ・スンファンにつないで守りきった。 和田監督は「ロースコアを予想していた。何点も取れないと予想した中、メッセンジャーが8回までしっかりと抑えてくれた。大谷は、攻略したとはとても言えない」と言ったが、実は、阪神は、入念な大谷攻略のための秘策を準備していた。 「なかなか、セ・リーグでも、あれだけの真っ直ぐを投げるピッチャーがいないですから。まずは、あの真っ直ぐをなんとかしようとミーティングで話をした」と和田監督。この日の大谷の最速は、157キロだったが、そのスピードボール対策に試合前の打撃練習で打撃投手の投げる位置を通常よりも3メートルほど手前に出した。 高校野球でやるような速球対策だが、なりふり構っていられない。スピードボールを攻略するためには、バットスイングをコンパクトにすると同時に、タイミングの取り方、構えも含めて、あらゆる準備を早めておかねばならないが、その感覚をつかんでおくため、打撃投手を前に出して試合前の打撃練習を行っていたのである。巨人がキャンプで160キロマシンを打たせていたが、前に出たといえ、そこまで打撃投手の球速は速くはならない。それでもタイミングの取り方についてのリハーサルとしては意味があった。 そして、もうひとつの秘策が、7年目の柴田の2軍からの昇格、「2番・センター」での即スタメン起用だった。和田監督も「柴田は、対大谷君用だった。ファームでも好調を維持していたし、しっかりと準備をしてくれて結果が即出た。いい突破口、いい仕事をしてくれた」と、2安打の柴田を絶賛した。 柴田は、滅法ストレートに強いと評判の打者。コンパクトにバットを衝突させるタイプのバッティングで、その硬さが欠点ではあるが、スピードボールにパワー負けすることはない。今季は、伊藤隼太やルーキーの江越、俊介らが台頭する中、一軍チャンスがなく、2軍でも、横田や中谷、1軍からの調整組の外野手に出番を譲らねばならない環境に置かれたが、常に打撃練習の中で、DCの掛布雅之氏にチェックをしてもらいながら腐らずひたむきな努力を続けて好調を維持してきた。 大谷の立ち上がりにも、一死からストレートを三遊間に弾き、最初のチャンスを作り、5回も、柴田のセンター前から始まって、彼が決勝ホームを踏んだ。