「消えていなくなってしまいたい」と思っていた講談師・七代目一龍斎貞鏡が明かす過去「子どもたちには逃げ道を作ってあげたい」
「じゃあ、これからどうしようか」とすぐに答えを求めず、子どもの気持ちが乗って話してくれるのを待つようにしています。「無理をしてでも行きなさい」ということは絶対に言いません。自分の気持ちが大事。何があっても命を粗末にすることだけはあってはならないので、子どもたちの逃げ道を作ってあげることを常に意識しています。意識しないと、私もそういう過去があるので、ついマイナスな言葉を言ってしまうかもしれないと思っていて。
── 子どもと向き合っていると、自分の思い通りにならないことも多いかと思います。そんなときはどうしているんですか。 貞鏡さん:子育て中は、たとえ自分が40度の熱があっても元気な子どもたちは飛びついてきますし、ご飯も作らなければならず、お風呂にも入れなければなりません。綺麗ごとでは済まされないので、自分の心が乱れそうなときは、「ちょっとひとりにさせて」と夫に言って、たとえ10分でもひとりになる時間を作るようにしています。夫も、子どもがあまりにいうことを聞かないときに声を荒げそうになったら「ごめん、ちょっと外行ってくる」というように夫婦で気をつけるようにしています。
夫と結婚して、子どもを授かったことで「生きていてよかった」と強く思えたんです。あのとき、間違ったことをしなくてよかったと。命って本当に奇跡のかたまりなんです。師匠でもある父が3年前に他界しましたが、人は死んでしまうのも一瞬です。「この世に執着はない」というような気持ちでいた私に、夫と子どもたちが気づかせてくれた、命や愛という存在。きょうだいであっても十人十色、気性はまったく異なります。減点方式ではなく、一人ひとりのいいところを褒めて伸ばす加点方式で笑顔あふれる毎日を送ってもらいたいの一心です。
何事も、自分の意識の持ちようで変えられます。「目の前の納豆ご飯が美味しいのが幸せ!」と思うのだって自分次第です。つらい過去を思い出すと、どうしてもマイナス思考に流されてしまうので、なるべく意識して思い出さないよう過ごしています。