60歳からパートを始めて70歳で「繰下げ受給」するのは、賢い定年後の生き方ですか?
60歳で定年を迎えた後も、何らかの形で働きつづけることは今や珍しいことではないでしょう。加えて「繰下げ受給」によって年金を増やせることも知られ始めており、これらを組み合わせて定年後はより豊かに過ごそうと考える方も出てきているようです。 そこで「60歳からパートを始めて、70歳まで年金の受給時期を繰り下げる」という年金の受け取り方について考えてみます。
60歳からパートを始めるのはあり?
60歳からパートを始めることは、老後の生活を考えるにあたって、有効だと考えられます。 定年が70歳まで延長されている会社も存在している一方、再雇用や定年延長後の条件によっては、退職を選択する方も珍しくはありません。 そうした場合、問題となるのが当面の生活費です。年金は、一般的に、65歳から受給できるものです。60歳まで受給時期を前倒しすると、年金は24%減額されてしまいます(年金の繰上げ受給:1月当たり0.4%減額される。※昭和37年4月2日以降生まれの方の場合)。仮に年金額が月換算10万円であれば、繰上げ受給後は月換算7万6000円にまで下がることになります。 そのため、繰上げ受給をしない場合、60歳で定年退職をしても5年分の生活費が必要になります。それを賄うのが就労です。パートであっても自身に見合った働き方をすることで、60歳で定年退職しても、年金受給ができるまでの5年間の生活費を賄うことも可能です。仮に全額ではなくとも、一部を賄うことで、老後に備えて貯めてきた資産を長持ちさせることができます。
70歳まで繰下げ受給するのはあり?
年金は最大で75歳まで繰り下げることが可能です。繰下げ受給をすることで、1月当たり0.7%年金が増額されます。仮に年金が月換算で10万円の方が、70歳まで年金を繰り下げると、受け取る年金額は14万2000円になります。 ただし、繰下げ受給には注意点が1つあります。それは、もらえる年金額が増額する反面、受け取る期間が短くなるということです。 例えば、月々10万円の年金を受け取れる方が、80歳まで生きる場合で考えてみましょう。70歳まで繰り下げをすると、月々の年金を14万2000円受け取っても、生涯で受け取れる額は1704万円です。一方で、60歳から70歳までの間で受給した場合に、最も多く受け取れるのは62歳の場合です。その場合、生涯で1848万9600円を受け取ることができます。 そのため、繰下げ受給をするのであれば、長生きすることを前提に考える必要があります。仮に70歳まで繰下げ受給をし、かつ、最も多く年金を受け取ろうと思ったら、少なくとも86歳までは生きる必要があります。