新型セブン爆誕、現地検証 まいばすけっと&オーケーがライバル?
鮮魚は売れているのか、いないのか
店内で、セブンイレブン既存店との違いとして分かりやすいのは生鮮3品だ。野菜・果物、鮮魚、精肉はイトーヨーカドーの食品部門がなりわいとしてきており、そのノウハウの注入は今回の取り組みの目玉となる。 イトーヨーカドーでは、野菜・果物については、農家との直取引もあるものの、大半は出店エリアにある市場に精通する仲卸との取引で、鮮度の良い適正価格の商品を展開してきた。今回のSIPストアも同様のため、季節による品ぞろえなどでイトーヨーカドーのノウハウを生かすことが可能だ。 ただ、店内の売り場はスペースが小さく、購買意欲をそそる水準にない。現在の食品スーパーの野菜・果物の販売は圧倒的な種類と量の品ぞろえを基に、高い鮮度も含めて前面に打ち出すのが勝ち筋になっている。売り場に視覚的な魅力が欠かせないのだ。 思い切った広さのスペース確保が最終的な成功には必要だと思うが、廃棄が多くなるとフランチャイズ店の経営を圧迫するため、なかなか難しいのかもしれない。 鮮魚や精肉の売り場はどうか。店を訪れたのは午前だったが、割引シールを貼っている鮮魚商品が5割以上を占めていた。野菜・果物同様、商品の種類や量が豊富とは言えず、消費者の購買意欲をそそれなかった結果ではないか。コンビニというフォーマットでこういったカテゴリーの商品を買う経験が消費者にないことも、少なからず影響しているだろう。 なお、こうした「生鮮コンビニ」はローソンでも過去に企画されたことがある。今から10年前の14年2月、オレンジ色をイメージカラーとした「ローソンマート」が新浪剛史氏・玉塚元一氏体制で生まれたのだ*。16年度末までに500店舗を展開する予定だったが、約1年で撤退を決断している。 *現在、新浪氏はサントリーホールディングス代表取締役社長、玉塚氏はロッテホールディングス代表取締役社長 CEO
2000円台の高級冷凍食品も販売
一方、ここ数年で味や品質が一気に進化した冷凍食品に関しては、セブン&アイグループのシナジー効果が発揮されている。いくつも並ぶ冷凍ケースは圧巻で、260SKU(最小の管理単位)以上を展開。セブンイレブンの80SKU前後を大きく上回る。 イトーヨーカドーの冷凍食品プライベートブランド(PB)「EASE UP (イーズアップ)」、「セブンプレミアム」の1~2人用、また「俺のフレンチ 牛ホホ肉のシチュー」のような2000円台と高価格帯のものまで幅広い品ぞろえだ。もちろん、一般的なナショナルブランド(NB)の商品もある。今どきの売り場になっていて、この新コンセプト店の成否を左右する鍵になる可能性がある。 他では、顧客ニーズに応えた上でのシナジー融合ができていない点が気になった。例えば、デザートはPB商品が正面入り口から入店して右側にある“セブンイレブンの売り場”、NB商品は左側にある“イトーヨーカドーの売り場”に分かれていた。また、日用品の売り場も複数の場所で展開されていたのだ。 ●まいばすけっととの違いは? 松戸常盤平駅前店を見て、SIPストアのポイントが分かった。ここで、競合になり得るイオン系ミニ食品スーパー「まいばすけっと」との違いを3つ挙げておこう。 まずは価格だ。まいばすけっとはNB商品をディスカウント価格で販売しているケースが多い。例えば500mlのペットボトル飲料は、松戸常盤平駅前店が100円台半ばの値付けであるのに対して、まいばすけっとは3割引き程度、つまり100円を切る価格設定で販売されていたりする。 松戸常盤平駅前店=SIPストアが軌道修正して同じく薄利多売のディスカウント路線に踏み込むのか、それとも従来路線を貫くのか。これは注目すべきポイントだが、フランチャイズ店に入る利益のことを考えると、従来路線を貫くのではないだろうか。 弁当、おにぎり、サンドイッチ、スイーツの中食については、長年の商品開発に一日の長があるセブンイレブンを抱えるSIPストアが優位。まいばすけっとはそこまでの顧客支持を得られておらず、先行メリットは今後も続くだろう。 日用品の扱いは両店で分かれる。新たなグループシナジー創出をミッションとするSIPストアは、ベビー用品「アカチャンホンポ」や生活雑貨「ロフト」のコーナーがあり、既存のセブンイレブンが用意しているダイソーの売り場も展開している。それに対して、まいばすけっとは必要最低限の「緊急購買需要」に応える売り場という性格が強い。 日用品は食品と比べて買い上げ頻度が低く、近隣にある競合店の状況によって売れるものが変わるカテゴリーでもある。松戸常盤平駅前店は、他にエシカルコーナーや千葉県のマスコットキャラクター「チーバくん」のグッズも展開し、フルスペックの様相を呈している。今後は個店環境に合わせた展開になっていくのではないか。