2人に1人ががんの時代 治療費負担などによる悪影響「経済毒性」と戦う【WBSクロス】
がん患者の鈴木さん。治療も仕事も諦めかけていましたが、両立支援を受けることになりました。患者はまず、勤務先とともに、業務内容を主治医に提出します。それをもとに、主治医は患者に仕事と治療の両立について指導。さらに勤務先にも主治医意見書を渡します。 鈴木さんの主治医意見書には、症状や治療の予定のほか、休憩などの配慮があれば働きやすいなどと書かれています。 「もともと100だったものが90、80、70になるかもしれないが、その状態でちゃんと戦力になることは会社に分かってもらう」(小澤医師) 両立支援では、医師は使う薬にも目を配ります。肺がんだけでもおよそ40種類の抗がん剤があるといいますが「いい薬だが、副作用として手足のしびれがある。例えば職人とか細かな仕事をする人には事前にそういうことを話す」(小澤医師)と、仕事内容と副作用を踏まえ、処方薬を選びます。 鈴木さんは今も生活を切り詰める日々が続いているとは言いますが「辞めなくて良かった。仕事があるって気持ち的にすごく余裕。安心感」と話します。 「両立支援に医師が1人入ることで、副作用とか治療の見通しまで含めた両立支援ができるということがすごく大事」(小澤医師)
社員ががんに...企業の支援は?
がんの経済毒性は患者だけでなく、雇用する企業も直面している課題です。 「工場の人は7.5時間、基本は製造ラインから離れることができない」(カルビー社員) 「企業内のがんコミュニティーは本来的に自発的なところがある。そこのファーストバリアをどうクリアするか」(電通社員) この日集まったのは、金融や製造、広告など様々な業種のおよそ60人。企業ができる治療と仕事の両立支援について意見交換をしていました。 がん患者の就労支援に取り組む「CSRプロジェクト」の桜井なおみさんは、がんを理由に社員が辞めることは企業にとっての経済毒性だと言います。 「企業の立場からみたら社員を失うのはものすごい損失。就労支援をみんなで応援することで、国の経済損失・企業の経済損失を防げる」(桜井さん) 参加した「アフラック生命保険」健康推進室の大賀有季子室長は「大変刺激になる。仕事を辞めてしまうことは何としても止めなければいけない」と話します。 同じく会に参加したサッポロビールでは、時短などの制度を整備し、働く意欲のある社員の治療と仕事の両立を支援しています。さらに、社内にがん患者たちのコミュニティーを作りました。 「これまで病気のことを伏せていた。自分の経験を話すことで、病気を受け入れられ」(乳がん経験のあるサッポロビールの社員) 「お互いに気を使い、心を使い、働きやすい環境を作れるか。それは制度より風土があってこそ」(頸部食道がん経験のあるサッポロビール人事総務部の村本高史さん) 経済毒性に対して様々な支援策がありますが、聖路加国際病院など病院自体がファイナンシャルプランナーと提携し、患者への支援を充実させるという動きも広がりつつあります。 ※ワールドビジネスサテライト