冤罪を生み出す「同調圧力」… 組織内における“集団意思決定”という名の落とし穴
「集団浅慮」のリスク
そもそも、複数人で作業することは、単純な課題では遂行が促進されるものの、困難な課題では遂行が阻害されると言われています。複雑な課題にはたくさんの人員を投入しないと解決できないと思われがちですが、話はそう簡単ではありません。 また、複数人で意思決定(集団意思決定)をするにあたり、集団内での意見の一致を過度に追求して批判的な意見を排除してしまったり、集団の能力を過大視してリスクを甘く見積もったりすることによって、結果的に不合理な意思決定を行なってしまうことを「集団浅慮」(Groupthink グループシンク)と言います。これは、集団の結束を乱すまいとして反対意見を表明することを控えるために、有効な問題解決が妨げられてしまうからだとも言われています。 他にも、集団意思決定では、単独の意思決定よりもリスクが高いものを選択する「リスキーシフト」という現象や、逆に過度に消極的な選択をする「コーシャスシフト」が生じると言われています。要するに、集団意思決定はより極端な結果になってしまうおそれがあるということです(集団極性化)。 さらに、いったん集団意思決定が行なわれると、それが間違いであったという情報がもたらされても従前の決定に拘泥してしまうこともあります。これは認知的不協和などが影響しているものと考えられます。 このように、集団意思決定のプロセスそのものに誤りが生ずる数々のリスクが潜んでいると言えるでしょう。集団体制では、一人で判断するよりも誤りの少ない判断が下されると考えられがちですが、現実はそうとは限らないのです。
社会的手抜きとは
誤りの原因は組織そのものではなく、構成員の心理傾向にもあります。集団で行動する際、自分一人くらい手を抜いても構わないと考えてしまう現象は「社会的手抜き」と呼ばれています。 また、自分の意見や信念を曲げて、他の人間と同じ考えや行動をとってしまう現象は 「同調」と呼ばれています。特に、人間は階層的集団を作って生存してきた生き物であり、権威に強く影響され、上位の人物に服従(同調)する傾向があると言われています。 これらの影響により、構成員が主体的に行動しなくなってパフォーマンスが低下した結果、誤りを生んでしまったり、生まれた誤りを指摘・修正できなくなってしまったりしてしまいます。
弁護士JP編集部