“新星ハリウッドスター”グレン・パウエル 『ツイスターズ』『ヒットマン』で新たな才能開花
新たな映画スターが生まれなくなったと言われて久しいハリウッド。“最後の映画スター”と呼ばれるトム・クルーズですら2023年は『ミッション・インポッシブル/デッド・レコニング』が期待された興行成績には届かなかった。洋画市場が消滅しつつある日本では“ハリウッドスター”の一般認知が20年ほど前から変わらず、62歳のクルーズを筆頭にブラッド・ピット、ジョニー・デップ、ウィル・スミスらビッグネームは今や皆50歳以上。次代を担うと期待される新星がまったく認知されていない。 【写真】『トップガン マーヴェリック』で“ハングマン”を演じたグレン・パウエル 2024年、主演作3本が批評、興行共に大成功を収め、現在ハリウッドで最も注目を集めている俳優をご存知だろうか。1988年生まれの35歳、“グレパ”ことグレン・パウエルだ。日本でも大ヒットした『トップガン マーヴェリック』のハングマン役で顔を覚えている人も少なくないはず。同郷マシュー・マコノヒーを思わせるテキサス訛りとワイルドさが魅力の彼は、ブレイクイヤーを飾る3本の映画でさらなる才能を開花させている。 “ハットトリック”が始まったのは2023年末。北米圏で12月に公開されたラブコメディ『恋するプリテンダー』は口コミを呼び、世界興収2億ドルを超えるロングランメガヒットに発展。まるで90年代ジュリア・ロバーツ映画を彷彿とさせる楽しさとスターカップルの華が、多くの観客を映画館に呼び戻した。グレパ演じる主人公ベンは筋トレ大好き、遊び慣れたプレイボーイに見えて、実は泳ぎも下手なら虫も苦手という愛すべきキャラクター。パウエルには自らを笑い飛ばすセンスがあり、まさかの全裸芸まで見せる思い切りの良さ。ちょうどひと回り年の離れた共演シドニー・スウィーニーとの相性も抜群で、2人は本作の大ヒットをきっかけにさらなる共演を模索しているとか。ライアン・ゴズリング&エマ・ストーンに続く“スクリーンカップル”として今後も映画ファンを楽しませてくれそうだ。 年下女優とのケミストリーはサマーシーズン公開作『ツイスターズ』でも発揮。ここでは主演のデイジー・エドガー=ジョーンズを中心に、アンソニー・ラモスと緩やかな三角関係を形成。パニックディザスター映画に洒脱な後味をもたらしている。パウエルが演じるのはストームチェイスを実況するYouTuberのタイラー。多くのハリウッド映画で下品な悪役として描かれてきた動画配信者も、グレパの手にかかれば途端に奥行きが増す。はじめこそ都会からやってきた才色兼備のヒロインにちょっかいを出すも、ひと度彼女の才能に惚れるやインテリジェンスで優しい素顔を見せ始めていく。カウボーイハットとジーンズが似合うグレパのオールドスタイルな男くささは、アメリカのカントリーサイドを魅力的に映した本作にマッチしていた。 ジャンルの異なる2作を連続でメガヒットに導いたグレパ。しかし彼の本質はもっと意外なところにある。地元テキサスで独自の映画製作を続ける名匠リチャード・リンクレイターと旧知の間柄である彼は、これまでも『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』などいくつもの映画で助演。満を持しての主演作『ヒットマン』でリンクレイターと共同脚本も手掛けている。