親が言いがちな「悪い子は置いてくからね!」が子どもの認知に及ぼす悪影響
「不安をあおる言葉」は、子どもの認知や行動に影響をおよぼす
親に長く不安をあおる声かけをされて育った人は、その影響が強くなりがちです。たとえば、親に「◯◯だと、友だちがいなくなるよ」というなにげなく言われた言葉を忘れられない子どもは多いです。 一般的に思春期と言われる8、9歳から18歳ごろまでというのは、発達心理学的に「自分は社会の中でどんな存在なのか」とか「自分はほかの人からどう見られているのか」ということが気になってくる年代です。 他人の目が気になること自体は正常な発達過程で問題はないのですが、小さいころから「そんな性格だから、あなたには友だちができないのよ」などと言われながら育った人は、ことあるごとに「ああ、私がこんなだから友だちができないんだ.....」とネガティブにとらえてしまう傾向があるのです。 「そんなんだと、ろくな大人になれないよ」などと言ってしまうことありませんか? もともと内向的で人見知りしやすいとか、性格がおとなしいなど、友だちをつくるのが得意ではない人もいます。それぞれの性格や発達の特性によって、行動やコミュニケーション方法がちがってくるのは当然です。 実際、診察室に来るお子さんの中には、クラスでも少し孤立しているとか、自分の居場所を見つけにくいなど、コミュニケーションに自信を持てない子も少なくありません。 でも、今のクラスには友だちがいなくても、また今は自分のコミュニケーションに自信がなくても、ずっとそうとはかぎりません。ただ、そんなふうにコミュニケーションに悩んでいる子が、親御さんからさらに追いつめられるような声をかけられていたら、やっぱり自分はダメな人間だと思い込んで、ますます人間関係が苦手になってしまいます。 親のなにげない不安をあおる子どもへの声かけが、その子のこの先の長い人生において悪影響をもたらすのです。 また、長く親に不安によってコントロールされてきた人は、自分に子どもができたときに、親と同じように不安によって子どもをコントロールする傾向があります。 こうしたなにげない不安をあおる声かけを子どもにしてしまう親御さんは、まず「子どもの不安をあおってコントロールしようとしていないかな」と自身に問いかけ、自分のやっていることに気づいてください。そうすることで日々の言動が変わっていき、その後の子どもとの関わり方も変わっていくのです。 これまで無意識にやってしまっていたと気づいて、不安になったお母さんもいらっしゃるかもしれませんが、大丈夫です。気づくことが、まずなにより大切です。気づけば、人は行動を変えていけます。いつからでも子育てはやり直せますので、気づいた自分をほめてあげてくださいね。
精神科医さわ(児童精神科医)