朝鮮戦争“休戦”から70年・中国への遺骨返還を考える
「赤い聖地巡り」のひとつに
「レッド・ツーリズム」という言葉を知っているだろうか。西側のメディアが付けた名称だが、赤は共産党の赤。中国の国旗の色でもある。共産党の歴史にゆかりのある場所、それは聖地にもなっている「赤い聖地巡り」だ。 特に、朝鮮半島の付け根に当たる、中国の遼寧省と吉林省は、朝鮮戦争で出征する兵士を送り出す中国側の基地でもあった。レッド・ツーリズムにおいて、朝鮮戦争参戦にまつわる聖地が、このあたりにはたくさんある。 国も、それら聖地を整備している。施設の建造だけではなく、ボランティアによる施設の清掃活動、また、施設の見学会や、生存している元兵士による講演会なども頻繁に開かれている。 一方で、北朝鮮を「厄介なお隣さん」と感じている中国の国民は少なくない。それだけに、中国の志願軍が参戦した意義、それもあって存在している北朝鮮が、中国にとっては厄介であると同時に、地政学的にも重要な役割を持つことも、国民に改めて教育したいだろう。犠牲になった兵士たちのおかげだと、ということだ。
今後も朝鮮戦争は中国にとって愛国主義教育の教材になる
科学技術を使って、この愛国主義教育を後押ししようという動きもある。昨年までに、中国に帰った志願兵の遺骨913柱すべてから、DNAを抽出した。身元が判明していないままの犠牲者の遺族を探す手がかりになるという取り組みだ。もし、遺族がわかったら、これも大々的に教育宣伝に使われるだろう。 日本の敗戦から5年後に始まった朝鮮戦争は、その後の日本に大きな影響を与えた。国際政治においても、戦後復興においても。戦火のもとで命を落とした中国兵の遺骨が祖国に帰還した話から、朝鮮戦争の休戦から今年で70年ということを考えた。
◎飯田和郎(いいだ・かずお)
1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。