ラリー北海道 XCRスプリントカップに参戦するCX-5に注目! マツダのラリーへの参画にマツダ社員もモチベーションアップ!!
全日本ラリー選手権第7戦「RALLY HOKKAIDO」が9月6日~8日の3日間、北海道の十勝・陸別地方で開催される。グラベル(未舗装路)でのラリーとなる北海道2連戦。全日本ラリー組の戦いはもちろんだが、ここでは併催されるXCRスプリントカップに注目したい。 SUV車両で競われるXCRスプリントカップに大注目! XCRスプリントカップは2022年にスタートした北海道内だけのローカルシリーズだ。トヨタ・ハイラックスやスズキ・ジムニーといった人気車種が参戦できるクロスカントリーラリーということで、回を重ねるごとに認知度と関心度が高まりエントラントが増加。先だって開催されたARKラリーカムイでは、三菱トライトンや、三菱アウトランダーPHEV、トヨタRAIZE、さらにはマツダCX-5が加わり、6車種10台が出走した。 ラリー北海道ではジムニー勢が6台に増加し、総勢17台のエントリーとなっている。 特にマツダCX-5には、兵庫県のTCP MAGICがマシンの制作を行なった車両をMAZDA SPIRIT RACINGとのジョイントプロジェクトとして参戦する。前戦のラリーカムイ同様ドライバーの寺川和紘選手、コ・ドライバーの石川美代子選手は社員ドライバーだ。まさにマツダ本体の活動と言ってよい。 クルマの楽しさを提供する活動の一環としてのモータースポーツ マツダとしてXCRに参戦する理由についてドライバーの寺川選手に聞くと、「クルマの楽しさを提供するする活動の一環として、モータースポーツの選択肢を模索するためSUVの可能性を探ることが目的のひとつ。CX-5が経験したことのない路面を走ることによって、より多くの課題を見つけて今後のクルマ作りに活かしたい」と語ってくれた。 ラリーカムイでは市販状態のクルマにロールケージとサスペンションといった最小限の架装を行なっただけの「ほぼノーマル」状態での参戦だったものの、終わってみれば無事完走してクラス2位。上出来のリザルトだと思われるが、寺川選手は「SSベストを1本獲れたのはよかったですが、やはり経験したことのないギャップを越えるような走りが原因なのか、エンジンがパワーダウンする症状が現れてペースダウンしてしまいました。正直悔しいですね」とのコメントだった。 実はこの言葉にこそ、まさに今回マツダが「ほぼノーマル」で参戦した意義が表現されているのではないかと感じる。 一般道での走りでは決して現れない症状が、ダートの荒れた林道でのラリーを走ると出現した。これをマツダの社員が身をもって体感する。そのデータをファクトリーで検証し、ノーマルカーとして必要なフューエルセーフであればそのままプログラムを残せばよいし、不必要なアラートであれば改善すればよい。ノーマルのCX-5をより良いクルマに進化させる過程として、最高のテストだったに違いない。おそらく、エンジンのフューエルセーフ以外にも、さまざまな現象が今回のラリーで出現し、検証されていることだろう。これが車両の開発現場にフィードバックされ、マツダの財産となるに違いないし、次のラリー北海道ではさらに強くなったCX-5が走ることは間違いない。 長く地道に参戦してきたマツダ社員ラリーストからは歓迎の声が デミオでJN5クラス3位表彰台を獲得したドライバー河本拓哉選手は、マツダの広島本社に勤務し5年目となる。普段はオートマチックトランスミッションの故障診断のプログラム開発を行なっているエンジニアだ。モータースポーツは九州工業大学の自動車部時代から開始し、大学院1年生のときにラリーを始めたそうだ。 「マツダとしてはラリーには最近あまり接していない世界なので、全日本ラリーにCX-5で参戦すると聞いて最初は大丈夫かな? と心配しました。S耐などサーキットでのレースとは違いますからね。しかし、いざ実際に現場に入ってみると、会社の上層部の方がいらっしゃたりいろいろな方に注目いただいて、影響力があるというのは素晴らしいと思いました。コ・ドライバーの石川美代子さんとは同じ部署で、『最近の全日本はどう? なにかいるものある?』なんていうことを聞かれましたが、アドバイスなんて(笑)。自分がこうしてラリーをずっとやってきているということを会社に知ってもらえたのはすごくありがたいことです。会社の中にラリーの仲間が増えてとてもうれしいです」と河本さん。 泥だらけのサービスパークに帰ってきた河本さんは、さらに泥だらけになって、楽しそうにメカニックとしての作業に入っていった。 美野友紀選手は、WRCの女性チャレンジプロジェクトへの参加が決まった平川真子選手のコ・ドライバーとして参戦。彼女もマツダの社員だ。大分大学に入学して自動車部に入部。それ以来15年、モータースポーツ活動を継続している。当時の縁で、広島本社に勤務している今も九州のチームに所属してラリーに参戦している。 「ずっとプライベーターとしてモータースポーツ活動を続けてきました。ようやく会社が追いついてきましたね(笑)。常々、会社にはいろいろな分野のモータースポーツにチャレンジしてほしいと思っていたので、今回こうしてラリーに参戦してくれたのはうれしいです。いま、マツダにはラリーに向いているクルマが少ないですが、XCRスプリントカップはSUVの活躍の場があるので、そうしたラリーにはぜひ参戦してほしいなと思っています」と美野さん。平川選手をフィニッシュまで導こうとする、タイムコントロールでの冷静な姿が印象的だった。 オープンクラスに参戦していた渋いミラージュのコ・ドライバー、丸山晃助選手もマツダの社員だ。ラリーを始めたのは九州大学に入学して自動車部に入ったことがきっかけだ。ラリー歴は20年になるという。大学時代は工学部で機械工学を学び、マツダに入社。現在はサスペンションの技術開発に従事している。 「マツダというと、しばらくサーキットでのレースがほとんどでしたので、会社がようやくラリーの世界に来てくれてとてもうれしく思っています。会社のプロジェクトとなると結果が大切になるので大変なのではないかと思いますが、これを機会に会社のみんなにも知ってもらって、ラリーって楽しいんだということを知ってもらえたらと思います。私も楽しく、ラリーを続けていこうと思っています」と丸山さん。CX-5のプロジェクトに参加したいか?という質問には、笑いながら「今のプライベーターのほうがラリーが楽しめていいかな」と笑う丸山さんだった。 なにしろ楽しそうにラリーに参戦しているマツダ社員の皆さん。マツダ以外にも、さまざまな会社に所属しながらラリーに楽しく、そして一所懸命参加している自動車関連企業の方々が多くいると予想する。プライベーターとしての参戦ではあるが、きっとこうした活動が、より良いクルマ作りのための高いモチベーションであり良い経験になっているに違いない。
渡辺 文緒