吉川晃司さんが「凄い試合」と評したIBF世界Sウェルター級2位決定戦とは?
ワールドスポーツの斎田会長は、「合格点とは言えないが、いい面を出したし、しっかりと成長を感じた。大人のボクシングを見せてくれた。世界で通用する馬力とパワーはある。ウィリアムズの映像は見たが、噛み合うし十分にやれる。井上のトリッキーさも世界共通でやりにくいものだと思う」と井上の成長を認めた。 当の井上も「パワーもフィジカルもまだまだこんなもんじゃない」と語ったが「もう少し時間が欲しい」と本音も。世界の舞台に立つために足りないものを実感しているのだろう。 確かに単調なスタイルから脱皮した姿は見せたが、世界を語るのはまだ早い。例え一撃で倒せなくともスタミナは十分にあったのだから、野中の技巧と強い意思をねじ伏せ、ギブアップに持ち込むくらいの継続的な波状攻撃が欲しかった。 斎田会長は米国での合宿計画を練っている。 今回はサウスポーのアウトボクサーである野中に似た大橋ジムの平岡アンディらとスパーをしたが、スピード、パワーを兼ね備えた世界のトップクラスとやるにはスパー相手が豊富な米国修行は必要だろう。 ちなみにIBFの世界王者は、4月7日に行われたWBA同級スーパー王者のエリスランド・ララ(キューバ)との統一戦を最終ラウンドにダウンを取って辛くも2-1判定で勝ったジャレット・ハード(米国)である。 同級WBC世界王者のジャーメル・チャーロ(米国)が6月9日に元WBA同級世界王者のオースティン・トラウト(米国)と防衛戦を行う予定で、その勝者がハードとの3団体統一戦に向かうため、今のところ井上に入り込む余地はない。だが、その展開になれば井上が「世界王者になる確率を上げるために」と希望する成長のための時間ができる。 最後に。 「ボクサーの井上です」 井上が知らない人に自己紹介すると井上尚弥(大橋ジム)の名前が先に出てくるという。来月25日に3階級制覇に挑む“モンスター”井上尚弥である。バンタム級の井上尚弥とは階級も違い直接のライバルにはなり得ないが、いつまでも「もう一人の井上」に甘んじているつもりはない。 「井上の中でも一番強い井上と呼ばれるようになりたいです」 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)