韓国総選挙で与党大敗も「反日回帰ない」 神戸大大学院木村教授
次の大統領選の行方は
27年の次の大統領選挙でも保守系は劣勢になる可能性があるでしょうか。 木村氏:国民の力の事実上のトップである韓東勲(ハン・ドンフン)非常対策委員長が敗北の責任を取って辞任しました。韓氏は尹大統領と同様に検察出身で、大統領の後継候補でもありました。この人を失うのは非常に痛いはずですが、しばらくして(政治的に)復活する可能性も否定はできません。他の候補が出てくる可能性もあります。 一方、進歩系は、李・共に民主党代表と曺・祖国革新党代表の間で候補者調整ができるかどうか。あるいはそれぞれの代理のような人が出ることもありえると思います。曺氏は最高裁で有罪判決を受ければ議員職を失います。保革の候補がどうなるかは、まだまだこれからですね。 頼みの半導体産業に米中対立激化の影 韓国の実質GDP(国内総生産)成長率は22年7~9月期に前期比0.2%と、4~6月期の同0.8%から減速。10~12月期にはマイナス成長に落ち込んだ。23年に入ってやや持ち直したが、23年通年の成長率は前年比1.4%と、新型コロナウイルス禍前の19年(2.2%)の水準にはまだ届いていない。 大きな要因は、22年後半からの「世界的な需要の減退で経済の柱の半導体産業を中心に輸出が低迷した」(呉子婧・日本総研研究員)ことだ。成長軌道への回帰には、半導体の需要回復が欠かせないが、懸念もある。 需要と生産の両面で中国への依存度が高いことだ。日本貿易振興機構(ジェトロ)で中国、韓国の調査を担当する益森有祐実氏によれば、韓国製半導体の需要の3割、生産地もサムスン電子ではDRAM、NAND型フラッシュメモリーともに4割が中国だという。 一方で、尹政権は米国との関係強化を図ってきた。米中の厳しい対立は今後も続くと見られるだけに、難しい立場に立たされる可能性もある。 米国は23年9月に米国内で半導体を製造する施設・設備に投資する企業に補助金を出すことを表明した。ただし条件が付く。補助金を受けた企業が中国国内に持つ工場での先端半導体の生産能力をそれまでの5%以上、旧世代の28ナノ(ナノは10億分の1)メートルのロジック半導体なら10%以上増強すると、補助金の返却を求めるとした。 さらに同10月には、1年前に改正して先端半導体や製造装置の対中輸出規制を強化したばかりの輸出管理規則(EAR)を再度改正。中国と関係の近い40カ国以上の第三国からの迂回輸出にも網をかけた。 サムスン電子やSKハイニックスの中国拠点については、ほとんどの規制対象製品を国外から輸入することを例外的に認めた。だが、EUV(極端紫外線)露光装置など、先端半導体製造用の一部装置はその除外対象にはならず、米中関係の状況によってはさらに修正される可能性もありそうだ。 尹政権は半導体産業の強化を目指して、「5年で計340兆ウォン(約38兆円)投資」「10年間で15万人以上の専門人材育成」といった戦略を打ち出し、民間投資を促進するために税額控除を拡充する考えも表明している。 しかし、大企業への支援拡大には進歩系政党支持者を中心に「国民の反発が強くなる恐れもあり、簡単にはいかない」(安倍誠・アジア経済研究所上席主任調査研究員)。総選挙敗北で基盤が弱くなった尹政権の経済政策のカジ取りは、内外ともに難しくなるばかりだ。
田村 賢司