結婚直前の29歳女性が、母親から「渡されたモノ」に激怒。地獄に落ちればいいのに<漫画>
傷つけられてきた自分が、知らないうちに加害者へ
原作・中川瑛さん(以下、中川):奈月のキャラクターを通して、僕はトラウマ、毒親、アダルトチャイルドなどの問題というか、キーワードを知って苦しんでいる人々のリアリティを描きたかったと思います。 実際、このような背景を持つ女性は非常に多く、GADHA(モラハラ・DV加害者変容に取リ組む当事者団体)はよく男性の集まりだと思われるのですが、実際には3割ほどは女性です。彼女たちは自分の加害性をコントロールすることに苦しんでいます。こうしてはだめだとわかっているのにやめられない、自分自身に振り回されるような感覚に苦しんでいる人がたくさんいます。これは男性の加害者も、加害を自覚してからは同様です。 これらの女性は、自分が傷つけられてきたと感じる一方で、知らず知らずのうちに他者との関係で加害者になってしまうことがあります。そうして孤立したり、人間関係で問題を抱える中で生きづらさを自覚して色々調べてみると、上記のようなキーワードに出会う。社会や育った環境の中で被害者であったことを気づかせるものですが、現在は加害者となっているという事実に直面することは、非常に辛い現実です。
子どもを持つことへの恐れや、親になることの不安
中川:奈月を描く際には、彼女の内面の葛藤や、生きづらさを感じている人々の感情を正確に表現することに注意しました。また、子どもを持つことへの恐れや、親になることの不安を抱えている人々の心情も描きたかったです。自分の生きづらさや、親からの影響を受けていることを認識した上で、同じ過ちを繰り返さないようにしたいという思いは、多くの人が共感できるものだと思います。実際、とても多くの方が、苦しんでもいます。 加害者が毒親にならないようにしようと思い、これらの葛藤を周りに共有したりする時に、「親もひとりの人間だし、許してあげたら」とか「いつまでも親のこと意識しすぎじゃない?」といわれるようなこともよくあります。しかし、自分の加害者性を認めるからといって、自分の傷つきや痛みがなかったことにはなりません。そして、実際、人を傷つけてきた歴史がなくなるわけでもありません。それがなくならないことを認めるからこそ、その痛みを引き受けてケアを始めていくことができるからこそ、きっと被害者から加害者になってしまった人の、その先の変容があるのだと思っています。