特別養護老人ホームでの「ショートステイ」 どんな時に利用する?
わたしたちの暮らしを支える社会保障制度はどのようなものなのでしょうか。介護保険や年金などについて、読売新聞社会保障室の記者が解説します。 【表】ショートステイの基本利用料の目安
保険料 事業主が負担
自宅で暮らす要介護者が、一時的に施設に宿泊して介護を受けられるサービスとして、「ショートステイ(短期入所生活介護)」があります。主に特別養護老人ホーム(特養)が、専用のベッドを用意しており、利用者は食事や入浴、トイレの介助を受けられます。
特養に入居できるのは原則、介護の必要度が高い「要介護3」以上の人ですが、ショートステイは、最も低い「要支援1」の人から利用できます。体操などのレクリエーションやリハビリといったサービスもあります。日帰りで利用するデイサービス(通所介護)とは異なります。 利用するには、基本利用料(原則1割負担)のほかに、部屋代と食費がかかります。 例えば、リビングスペースを中心に個室が並び、利用者10人ほどをグループ単位でケアする「ユニット型個室」の場合、1日の基本利用料は、「要支援1」の人で529円、「要介護5」の人で987円です。1泊2日を過ごした場合、2日分の負担になります。 短期の利用を目的としているため、自己負担が原則1割となるのは基本的に、連続30日までとされています。
では、どんな時にショートステイは利用されているのでしょうか。要介護者が病気やけがの治療を終えて病院から退院する際、体が弱ったまま、いきなり在宅生活に戻るのが不安な場合が考えられます。 また、訪問介護サービスだけを利用し、家にこもり続けているうちに昼夜が逆転してしまった人が、規則正しい生活を取り戻すために宿泊することがあります。 一方、家族が仕事で出張したり、冠婚葬祭のため泊まりがけで外出したりして、自宅で見守る人が不在になる場合も利用されています。家族が体調を崩した時や、心身に負担がかかったことで「介護疲れ」を感じた時などの「レスパイト」(休息)を目的にするケースもあります。 公益社団法人・認知症の人と家族の会(京都)代表理事の鎌田松代さん(68)によると、家族が心身ともに健康でないと、高齢者が住み慣れた自宅で介護を受けながら生活するのは難しくなるといいます。「介護疲れが原因で虐待をしてしまうのを防ぐためにも、お互いに適度な距離を保つことは大切です。ショートステイを利用することで、安心して介護を続けられるという家族はたくさんいます」と話します。 一方、「要介護3」以上の場合、特養に入居する準備として利用する人が多いです。 東京都板橋区で活動するケアマネジャーの蓮沼美歩さん(49)は「特養の雰囲気を知り、ほかの入居者との共同生活のリズムを体験する良い機会になります。実際に入居した際、顔見知りの介護職員がいれば、安心できます」と言います。施設選びでは、飲んでいる薬や、夜間のトイレの回数といった生活状況を丁寧に尋ねてくれるかもポイントになるそうです。(野島正徳)(2024年9月3日付の読売新聞朝刊に掲載された記事です)