今後10年間で出生数が半減「最悪の悪循環」の正体 「少子化」「老後不安」がお互いを悪化させている
『きみのお金は誰のため』112ページより 少子化が進むと働く人の割合が減る。働く人の割合が減れば、当然、提供される物やサービスの総量も減る。どんなにお金を貯めていても、必要としている人全員に行き渡ることはない。結果、物価が上昇するので、「老後の必要資金」は増えることになる。 5年前、2000万円必要だとされていた老後資金は、今では3000万円とも4000万円とも言われている。 この悪循環を止めるには、「子育てすると、老後がより不安になる」という状態を断ち切る必要がある。
子育て支援政策は最優先でおこなうべきだが、これまで本格的な支援をしてこなかった代償は大きい。その理由として、財源の問題がある。 「今後の高齢化による社会保障費の上昇を考えると財政赤字を増やせない」という理由は、正しそうに聞こえる。しかし、社会保障の前提になっているのは、「医療や介護をする人が十分に存在する」ということ。働く人が足りなければ、社会保障費を使う先が存在しないのだ。 また、「子供手当などのお金を配っても、出生率は上がらない」という反論も聞くが、これも反論としては成立していない。「お金だけではなく、他の理由も存在している」と考えるべきだろう。
実際、「子どもは欲しくない」と回答する若者の理由は、経済的な理由以外にも複数あるからだ。マイナビが大学生向けに行った調査では、その理由として「経済的に不安」だけでなく「うまく育てられる自信がない」「自分の時間がなくなる」「精神的に不安」などの項目も、約半数の学生が理由として挙げていた。 ■出生数75万人は「明治維新期」以来の少なさ 日本の年間の出生数が、現在と同じ75万人程度だったのは、明治維新真っただ中の1870年代にさかのぼる。当時の日本は、その人口3000万人程度。生産性は今よりもずっと低かった。
それから150年経ち、人口も生産性も増えているのに、当時と同じ人数の子どもを育てる支援ができない社会はいかがなものだろうか。 子育てとともに、人材育成も急務だ。 「老後不安」を口にする大学生の話をしたが、将来のお金への不安が強すぎるあまりに、奨学金の返済を急ぎ、学業よりもアルバイトを優先しているという話を聞いたこともある。 『きみのお金は誰のため』の中にも、主人公たちが学費で困っているシーンがある。