FC今治をJ2昇格へ牽引! マルクス・ヴィニシウス 「勝利への貪欲さがすべて」
FC今治は第29節のSC相模原戦に0-2で敗れ、13試合ぶりの黒星を喫したが、J2への自動昇格圏内の2位をキープしている。目標達成の瞬間が一歩ずつ近づく中、チームを力強く牽引するのが、FC今治の一員となって3シーズン目のFWマルクス・ヴィニシウスだ。10番を背負い、キャプテンマークを巻いてピッチに立つブラジル人アタッカーは、29試合を終えて13ゴールでリーグトップタイと好調。8月のJ3月間MVPにも選ばれ、活躍が際立っている。(大中祐二) ▋全身からあふれ出す勝利への執念 ひとたびピッチに立てば、勝ちたい気持ちが全身からあふれ出す。競り合いの強さを生かし、ドリブル突破から強烈な左足シュート、さらに176cmと上背がある方ではないが、空中戦に勝利して攻撃の起点となり、ヘディングシュートからゴールを狙う。今シーズンは得点を量産するが、「自分は点取り屋というより、もともとチャンスメーカー」という言葉のとおり、昨シーズンはリーグトップタイの10アシストをマークしている。チームのエースであることは、もはや説明の必要もないだろう。 ただ、負けず嫌いな性格ゆえに、おととしは一度、去年は二度、退場している。勝負に執着し、戦う部分と紙一重なところではある。だが昨シーズン、自身が退場した2試合はいずれも敗戦。最終的にチームが勝ち点3差で昇格を逃したことを考えれば、2試合で最後までピッチに立てなかったことは、ヴィニシウスにとって殊更悔やまれる結果となった。 ▋精神的成長を感じさせた一戦 戦う姿勢はそのままに、自分自身をコントロールする精神的な成長を感じさせたのが今シーズン、アウェイの第27節・北九州戦だ。上位の直接対決となった一戦は、試合開始から熱いバトルが繰り広げられ、その中でヴィニシウスも前半でゴールを挙げる一方、アディショナルタイムにラフプレーでイエローカードをもらってしまう。そこからさらなるヒートアップも予想されたが、服部年宏監督の信頼は揺るがなかった。 「当然、イエローをもらっている選手は退場に気をつけなければなりません。ですが、ヴィニはハーフタイムでロッカールームに戻ってきたときにはすでに落ち着いていたので、特に何かを彼に言うこともなかったし、ヴィニもしっかり後半のプレーに入ってくれたと思います」 指揮官の期待通り、交代でベンチに退く76分まで攻撃はもちろん守備でも労を惜しまず走り続けて、3-0の勝利に大きく貢献した。 ▋J3優勝もあきらめていない 今治にやってきて以来、ただ一つの目標、J2昇格を達成するための戦いも、いよいよ10試合を切った。キャプテンマークを巻いて円陣の中で仲間たちに、そしてSNSを通じてファン、サポーターに、どのような発信をしていくつもりなのか。 「勝利への貪欲さがすべて。ハートが本当に重要です。その一瞬のプレー、球際で、FC今治に関わるすべての人たちの人生が変わってくる。サポーターの皆さんには、これまでの応援すべてに感謝しています。そして私たちの目標に向かって、引き続きサポートしてください。皆さんの応援でスタジアムを満たしてください。私はJ3優勝もあきらめてはいません。目の前の試合にしっかりと勝利し、残りの試合が終わったとき、私たちの目標を達成できるように戦いましょう!」 プレーヤーとしてはもちろん、1人の人間としてもリスペクトすべき存在。FC今治の歴史に名を刻むブラジル人10番のチャレンジが、いよいよ総仕上げのときを迎えようとしている。
愛媛新聞社