猫ブームバブルの裏側で発情期をコントロールする悪徳業者が横行…「子猫は死ぬと冷凍庫に保管し、ある程度死体がたまると…」とある繁殖業者アルバイトの証言
「子猫は死ぬと冷凍庫」
2018年7月、関東地方北部の猫の繁殖業者を取材した。住宅街に立つ3階建ての戸建て住宅。そのなかで100匹近い猫たちが暮らしていた。 なかに入ると、アンモニア臭が鼻をつく。1階の部屋には狭いケージに入れられた猫が多数いるほか、妊娠中でおなかを大きくした猫が何匹もうろうろとしていた。2階を住居スペースにしており、3階にも数十匹の猫がいるという。 この住宅に住む女性が猫の繁殖を始めたのはおよそ10年前。最初は小規模に始めたが、いまでは常に20~30匹の子猫がいるほどの繁殖業者に成長した。インターネットに広告を出して直接消費者に販売しているほか、埼玉県内の競り市にも出荷している。 これだけの数の猫の面倒を、女性を含めて1~2人程度で見ている。当然、健康管理は行き届かない。 かつてこの繁殖業者のもとで働いていたというアルバイトの女性はこう証言した。 「とにかく病気の子が多い。治療を受けさせてもらえないまま死んでしまう繁殖用の猫もいました。くしゃみや鼻水を出しながら繁殖に使われている子もいて、そういう猫たちは、絶対にお客さんの目には触れないよう隠されています。親の病気に感染して死んでしまう子猫も少なくなく、働いている間は頻繁に猫の死体を目にしました。子猫は死ぬと冷凍庫に保管し、ある程度死体がたまると、業者を呼んで引き取ってもらっていました。成猫は1匹1000円程度で引き取ってもらっていたようです」 繁殖用の親猫を増やし、子猫を増産するなかで劣悪な飼育環境に陥る業者が出てくる一方、バブル状態の市場環境は、新規参入を促す。 脱サラや定年退職して猫の繁殖業を始める人もいれば、「農家の人で、野菜を作るより猫を繁殖するほうが効率がいい、と始める人もいると聞く。安易に猫の繁殖を始める人が相当いる」(大手ペットショップチェーン経営者)といった状況だ。 文/太田匡彦
---------- 太田匡彦(おおた まさひこ) 同業他社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当した後、AERA編集部在籍中の08年に犬の殺処分問題の取材を始めた。ペット情報発信サイト「sippo」の立ち上げに携わり、特別報道部専門記者などを経て21年から文化くらし報道部記者。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』『「奴隷」になった犬、そして猫』(いずれも朝日新聞出版)などがある。 ----------
太田匡彦
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