八木勇征「いじめは身近に」「当事者として考えて」…生徒への復しゅうを誓う教師を演じて思うこと
今日スタ―ト、縦型課金ショートドラマ『最期の授業』
ダンス&ボーカルグループ・FANTASTICSの八木勇征が、日本テレビが初めて企画・制作する縦型課金ショートドラマ『最期の授業』(26日配信スタート)に主演している。数々ドラマ、映画に出演してきた八木は、これまでとは一線を画す狂気に満ちた高校教師を好演。配信に伴い、八木がENCOUNTに役への思い、初めて経験したスマートフォン撮影現場のことなどを語った。(取材・文=ふくだりょうこ) 【写真】ショートドラマ『最期の授業』で教室で銃をつきつける教師・丸山武(八木勇征) 八木が演じる主人公は、未来高校3年F組の担任・丸山武。同僚で恋人の今泉理恵を失ったことで、復しゅうを誓っている。それは卒業式前日に「最期の授業」と称し、音楽室に生徒たちを閉じ込め、殺し合いをけしかけること……。恋人を死に追いやったのは、生徒たちだったからだ。 同作は今年11月、COL JAPANからローンチされた新ショートドラマアプリ「UniReel(ユニリール)」のオリジナル企画第1弾配信作品となる。撮影期間は4日間。八木の消耗は激しかったという。 「自分が描き続けた丸山の解像度を上げていけば上げていくほど、『自分の体が追いついていない』ということを体感していました。あれだけの心の叫びを発し続けたら、『人間はこんなにも消耗してしまうんだな』と」 逆に短期間だったからこそ、なりふり構わずに取り組めたのだろうか。今回の作品に関しては、「体をケアしなければ」などと言った先のことは考えずに、本気で何も守ることなく丸山を演じたという。 「物語の通りに順撮りをしていたのですが、4日目あたりにはもうほぼ声が出ませんでした。その状態でも、後半になればなるほど伝えたい大切な言葉や、生徒たちの変化を見て自分の思いを伝えるセリフが出てくるので、心に留まってほしいという思いから、間合いや感情のままに少し大げさに伝えました」 撮影に入る前と終える時とでは、気持ちは大きく変化した。クランクインする直前は、「いい意味で重くて暗い気分だった」と振り返った。 「恋人を死に追いやった生徒たちの良い印象がゼロどころかマイナスなので、負の感情のような黒いもやがずっと自分を包んでいるような感覚でした」 丸山ならば、確かに生徒たちに好感を抱けるはずもない。それだけ、八木が丸山という役に入り込んでいたということだろう。それがクランクアップ時には変化していた。 「クランクイン前は生徒の名簿を見ても、どこか黒く濁っているように見えていました。それが、クランクアップしたら、僕の気持ちも晴れやかになったのと同時に、生徒一人ひとりの顔がしっかり見えるようになったんです。『ああ、こんなことあるんだな』と思いました」 卒業式前日に、音楽室で生徒たちが殺し合いをする。そんなショッキングな内容に注目が集まるのは当然のこと。ただ、このデスゲームの根底には一つの問題がある。いじめだ。 「何より伝えたいメッセージ性がしっかりとあって、丸山もむやみやたらに殺りくをしているわけではないんですよね。今、リアルタイムで自分たちが生きている世界でも不条理なことや、不平等なことがあると思います。『良くない方向への変化も多くある』と僕自身も思っています」 そう話す八木の言葉に熱が帯びていく。 「いじめは自分と無関係だと思っているかもしれないけれど、意外と身近なところで起こっていることだと思いますし、学校関係なく、大人の社会でも起きていることです。そんな風に『これだけ苦しんでいる人がいるんだよ』というメッセージも伝わってほしいですし、もし、このようなことが起こった時、『自分が当事者だったらどう感じますか』ということを実際に考えてもらえたらうれしいです」 過激な描写だけではなく、メッセージとしてしっかり伝わってほしい。そして、それぞれがどう感じたのかを知りたい。そんな強い思いが言葉ににじんだ。強い思いはもちろん演技に反映される。そして、今回は縦型動画ということで、撮影はスマホで行われていた。八木にとって初めての経験だった。