逮捕のリスクを顧みず「警察」さえも詐欺に利用…「総額6億5000万円」を騙し取った「地面師」たちに不動産業界震撼
意外な場所で捕まった山口
「だから吉永には、すぐに呉さんに連絡を取るよう強硬に迫りました。『諸永事務所は呉さんの代理人なのに、なぜ連絡一つ取れないのか』と詰め寄ると、彼は『いつも山口を通じて連絡しているからつながらない』なんて調子なのです」 それが15年秋から冬にかけてのことだ。地道たちは必死だ。山口の消息を意外なところでつかんだ。折しも山口が暴行事件で築地警察署に逮捕されていたのである。だが、そこでも地道は地団太を踏まされた。 「警察署なら逃げられない、と築地署に面会に行きました。しかし、当人が会わないと拒否する。それで会えずじまいでした。そのあと、山口はいつのまにか釈放されていた。以来、山口とは今も連絡が取れていないのです」 当然のごとく地道たちは、別の警察署に駆け込んだ。最初は本物の呉の住所のあった吉祥寺を管轄する武蔵野警察署に相談したが、あまり捜査に乗り気でないと感じ、伝手をたどって12月に入り、神田の万世橋警察署に被害を届け出た。そうして山口やニセの呉、さらに諸永事務所の吉永らに対し、刑事告訴に踏み切ったのである。 『「もしもあの時気づいていなかったら」…不動産詐欺被害を間一髪で免れた社長が語る「地面師」たちの「ゾッとする話」』へ続く
森 功(ジャーナリスト)