道教大釧路校松原教授、新種の貝化石発見「サガノシオガマ」命名
北海道教育大学釧路校の松原尚志教授(56)が、佐賀県唐津市にある約3400万年前の地層「杵島層」から、新種の化石二枚貝類を発見した。「トランスカイシオガマ属」と呼ばれる種として世界最古、日本初記録となる発見で、松原教授が地名を取って「サガノシオガマ」と命名した。 今回見つかった新種は、松原教授が2002年に「人と自然の博物館」(兵庫県)在職中、当時の佐賀県東松浦郡北波多村下平野(現唐津市北波多下平野)に所在する、田中川の川底に露出していた杵島層から採取した貝類化石標本。その後研究を重ね、09年には「シンウソシジミ亜属」の新種として口頭発表したが、比較用の現生や化石標本が不足しており、論文での発表は控え研究を続けていた。 転機が訪れたのは15年、チューリッヒ大学(スイス)の貝類学者が、新しいフタバシラガイ科の分類を提唱。これにより松原教授が採取した化石がトランスカイシオガマ属の新種であることが明らかになった。 現在、同属の種は、主にインド洋の汽水~浅海域に生息しているほか、地中海東部と東南アジアのごく一部にのみ分布している。今回の発見により、約3400万年前は北西大西洋の中緯度地域にも分布を広げていたことが示唆されるという。 論文は5月31日に発行された日本貝類学会誌「VENUS」で公表されており、今後分類学的研究を進めることで、過去の海洋生物体の解明などにつながる可能性もあるという。松原教授は「20年以上にわたり研究していたことが解明でき、まずはほっとしている。日本中から採取した化石がまだまだあるので、新たな新種の発見にも力を入れていきたい」と話している。 松原教授の論文は、国立研究開発法人科学技術振興機構が運営する電子ジャーナル「J―STAGE」内で「フタバシラガイ科」と検索し、無料で閲覧可能。