間違いなく面白い「2023年配信の韓国ドラマ」ベスト5!映画ライター渥美志保が見どころを解説
『財閥家の末息子~Reborn Rich~』
貧しい生まれで学歴もないながら、「できないと言わない、なぜかと尋ねない、自分で判断しない」の3原則を貫いて、財閥「スニャングループ」の現会長の側近にまで出世したヒョヌ。病に倒れた会長の不正蓄財に気づいた彼は、次期会長の命で対処に当たるもののその最中に何者かによって殺されてしまいます。 ところがどういうわけか目覚めた彼は、時代を遡り、グループを一代で築いた前会長ヤンチョルの婚外子の末孫(つまり現代の会長の異母弟の末息子)ドジュンに生まれ変わっていました。一族のうちの誰かが自分を殺したと確信するヒョヌは復讐を決意。 頭脳明晰なヒョヌの記憶と能力をそのまま持つドジュンは、例えばヤンチョル会長が大韓航空機事故に巻き込まれるのを防いだり、江南バブルの以前の土地を買い占めたり、ベスト4に進出したワールドカップをビジネスに利用したり……などでグループを掌握していきます。 これらの歴史的イベントを知る40代以降の視聴者にとっては、彼のシャープな作戦が手に取るように分かり、アホで傲慢な一族が一人また一人と仕留められてゆく様はとにかく痛快。実はドラマの冒頭では、この末息子ドジュンも謎の事故死をしていることが示されており、ヒョヌの殺害と合わせて物語がスクリューする終盤も見事です。
『クイーンメーカー』
財閥企業ウンソングループで長年、一族の尻ぬぐいと陰謀画策を一手に引き受けてきた元広報室長ドヒは、次女の婿養子ジェミンが起こしたレイプ事件のもみ消しを拒否してクビに。おりしも始まったソウル市長選挙にジェミンが出馬することを知ったドヒは、これを阻止すべく、人権弁護士ギョンスクを口説き落として対立候補に……。 クールな一匹狼ドヒと、情熱的で仲間思いのギョンスク、バツイチのドヒと、夫と息子を持つギョンスク、「選挙は見た目」でギョンスクを改造するファッショナブルなドヒと、「嘘はいや!」と生放送中テレビカメラの前でコルセットを外してしまうギョンスク。同じ目的を持ちながらキャラクターは正反対のふたりが、ある時はぶつかりあい、ある時は助け合いながら、やがて最高のコンビになって勝利するまでを描きます。 強大な権力をむこうにまわして戦う二人は、敵の陰謀によってトンデモなくひどい目に合わされるのですが、ドヒがよれよれになればギョンスクが肩を貸し、ギョンスクがぺしゃんこされそうになればドヒがその下に潜り込み、そんな彼女たちの周囲に女性たちの連帯の和が広がってゆくさまがどうにも胸アツ。 ムン・ソリ、キム・ヒエというパワフルな韓国の女性50代俳優の素晴らしさはもちろんですが、最悪の政治腐敗の中にいる日本で、こういう政治がほしいんだよ! という世界が描かれている作品です。