AI時代の大波、どう乗りこなす? 「退避」「防御」「波乗り」……“ITオンチ”でも泳ぎ切る3つの戦略
対話型AI(人工知能)のChatGPTが話題です。便利さを歓迎する一方で、「AIに仕事を奪われずに働くには」と、悩む現役世代も少なくありません。 大学時代は文系で、現在はAI・DX分野のコンサルタントとして活躍する倉嶌洋輔さんにインタビューしました。 鍵を握るのは、AIやテックに対する「苦手意識や食わず嫌いを取り除くこと」だといい、“ITオンチ”でも泳ぎ切るための3つの基本ステップを紹介します。
AI時代の大波。逃げ切れるか?
――書籍『AI時代のキャリア生存戦略』を書いた動機を教えてください。 倉嶌:書店に行くと、AIやテックに関連したキャリアの本が結構あります。 「これからAIの時代です」とか「データサイエンスを身に付けましょう」といった1択の選択肢しか示していないことが多いです。専門家である著者にとって最適な解かもしれませんが、世の中にはパソコンを持ってない人やITリテラシーが十分でない人も存在します。 もう少し裾野が広いキャリア戦略があるのではないかと、つぎの3つを書きました。 (1)代替されない職業にひとまず逃げる「退避戦略」 (2)マルチスキルでAIから身を守る「防御戦略」 (3)AIスキルを自ら持って波に乗る「波乗り戦略」
3つ目はAIの知識をフルに使いますが、あとの2つはAIの知見がなくてもOKです。 1つ目の退避、つまり逃げるのは初めに思いつく戦略で、テクノロジーの大波が到達しないように高台に逃げることです。 高台とは、具体的にはAIに置き換えることが難しい職業に就くことです。 例えば、整体師やアロマセラピストといった人間対人間の対面サービスを行う職業。また、フォトグラファーといった写真の構図や光量によって撮り方を変えて撮影するといった技術は、現在のところ、AIに置き換えるのは難しいとされています。
――逃げると、いわゆる低所得者になってしまいませんか? 倉嶌:ご指摘のように「退避戦略」では今後、大きくは稼げない可能性は高いです。 キャリアの主眼がもし「稼ぎたい」ということであれば、2つ目のマルチスキル化による「防衛戦略」か、AI分野でスキルを高めた3つ目の「波乗り戦略」をお勧めします。 政府がAIやIT分野のリスキリング(学び直し)で今後、サポートをしてくれるかもしれませんが、まずは生き残るというのが退避で、「最低限の戦略」という位置付けです。AIによる代替が今は難しい仕事をしたとしても、それで終わりではありません。 例えば、先行事例のあるケースでいえば、マッサージ師の場合、情報をインスタグラムやYouTubeなどSNSで発信するとか、整体院をいくつも建てるとか、協会を設立してネットワークを広げるとか。“退避先”でもキャリアの質や幅を広げていく努力はいると思います。