キュウソ、サンボ、Dragon Ashらが東京ガーデンシアターで競演! 『ビクターロック祭り2024』オフィシャルレポート
■SCANDAL 芸人の持ち時間は5分なのに、さっきどんぐりたけしが8分やって舞台監督さんがピリついている、俺は「2分でいけますか?」と訊かれた、いけるわけないだろ!──という怒りをツカミにして爆笑をとった、サツマカワRPGを経てのアクトは、SCANDAL。 4人がそれぞれお立ち台に上がり、ひとしきり踊ったり手を振ったりしてから、「最終兵器、君」でスタートする。HARUNA(vo/g)はギターを提げず、ハンドマイクで、ステージの端から端まで使いながら歌唱。 2曲目「マスターピース」からは、HARUNAがギターを手にし、本来の立ち位置に戻る。左からドラムRINA、ベースTOMOMI、ボーカル&ギターHARUNA、ギターMAMIの横一列で、RINA以外の3人の真後ろにひとつずつアンプがある、衣装は赤一色、という今のSCANDALのフォーメーション、とても画になっている、と、観るたびに思う。海外での活動が常態化しているバンドだから、身につけた武器なのかもしれない。 「瞬間センチメンタル」では、TOMOMIがハンドクラップを求め、HARUNAはシンガロングを求める。そのどちらにも、瞬時に付いていくオーディエンス。ワンマンじゃないのに、この求心力。 「『ビクターロック祭り』は5年ぶり。ビクターに来てから6年ぐらいになるんですけど、去年、ガールズバンドとしてギネス世界記録をとりました」とHARUNA。SCANDALは昨年、ガールズバンドで、メンバーチェンジなしで17年続いていることが、ギネスの世界最長活動記録に認定された(なので今年で18年)。 HARUNA、「『世界一』というタオルを持っているのが、うちのファンです。世界一長く続けているガールズバンドと、その世界一のファンです」。 まだまだやっていくぞ、という覚悟をこめて書いた曲です、という紹介から始まった「ハイライトの中で僕らずっと」では、バック・トラックも相まって、洪水のような音が東京ガーデンシアターを満たしていく。 さらに激しく、さらにダンサブルな「テイクミーアウト」では、オーディエンスの腕が上がり、アリーナが揺れる。 続く「A.M.D.K.J.」ではヘドバンも出た上に、後半のブレイクでは、HARUNAのアオりに応えてでっかいシンガロングが起きる。参加者のリアクションの温度が、おもしろいように上がっていく。 ラストは、HARUNAとTOMOMIがツインボーカルをとる「LOVE SURVIVE」で、ステージから放たれる熱も、フロアと客席から放たれる熱もピークを迎えて、SCANDALのステージは終了した。 Text:兵庫慎司 ■go!go!vanillas ここでgo!go!vanillasが登場。現在はポニーキャニオン内のIRORI Recordsに所属するビクターOBで、『ビクターロック祭り』がスタートした2014年にメジャーデビューした彼らは、「青いの。」でライブを開始させた。軽快かつ澄みきったサウンドを鳴らすメンバーは、自らも音楽で遊びつつ、ときどきマイクをオーディエンスに向けたり「楽しんでね!」と呼びかけたりしている。 牧達弥(vo/g)の「今日はビクターへの愛を音に変えて、思いきり行くぞー!」という宣言を経て、柳沢進太郎(g)とサポートキーボーディスト・井上惇志のフレージングが楽しいインタールードへ。音楽に乗って観客が手拍子を始めた観客に対して、「いいね」と笑顔を向けたのは長谷川プリティ敬祐(b)。次の曲「エマ」ではビクター所属当時の演出をリバイバルし、観客と一緒に「ワンツースリー!」と声を合わせてから曲に入った。 〈東京の未来に~♪ 俺らがお世話になったビクターの未来に~♪ 僕らの未来に賭けてみよう〉歌詞をアレンジした「アメイジングレース」にイベントに懸ける想いを託すと、MCでは牧が「ビクターで10年の月日を共にして、移籍したんですけど、この祭りに呼んでいただきました。なんという愛。ありがとうございます!」と改めて感謝を言葉にした。演奏再開は、最新アルバム『Lab.』収録の「平安」から。この時代を生きる人々へのメッセージを込めた楽曲を歌う牧は、ステージを降りて観客に支えられながら、観客の近くに行って熱量高く届けている。最後方から力強く鳴らすジェットセイヤ(ds)を筆頭に、ステージから届けられる音もすごい威力。受け取る観客も真剣で、上がる声、掲げられる拳に熱が入っていた。 曲間をバンドが繋ぐなか、今度は柳沢が観客に言葉を掛ける。「俺たちはビクターにいた時から音楽を研究して、研究し続けて、ここまで音楽をやってきました」、そして「ここで一発デカい花火を打ち上げるために声と手拍子お借りしてもよろしいでしょうか!? ビクターへの愛を一緒に叫んでいただいてもよろしいでしょうか!?」と先輩THE BAWDIESからの影響も感じられる言葉とともにコール&レスポンスへ繋げると、「カウンターアクション」に突入だ。ギターが主役のアッパーチューンで、ギタリストである牧と柳沢は向かい合って楽器を掻き鳴らしたり、ひとつのマイクを共有しながら歌ったりしている。その裏ではギター組に負けじとプリティと井上も鳴らしまくり、セイヤが一音入魂のドラミングでバンドにブーストをかけている。その熱狂を絶やさず、シームレスに「来来来」へ。超クールな展開だ。 「最後に、このビクターとともに最初に作った、ロックンロールの魔法をかけて帰りたいと思います」と、ラストにはメジャーデビュー曲「マジック」が演奏された。ビクターとバニラズの10年の歩みを祝うとともに、同じくロックに魅了されている観客と想いを共有する晴れやかなエンディング。気持ちのよい余韻の中、『ビクターロック祭り2024』は残すところ3アクトとなった。 Text:蜂須賀ちなみ ■サンボマスター 「ヤーレンズ、サンボマスター、トム・ブラウンって、おかしいですよ、『ビクターロック祭り』」と、疑問を呈したりしつつ、本ネタでしっかり爆笑をとったヤーレンズの漫才の次は、そう、サンボマスターだ。 SEのゴダイゴ「MONKEY MAGIC」を、木内泰史(ds/cho)のドラムが、絶妙なタイミングで止める。次の瞬間、山口隆(vo/g)が弾き始めたイントロは、最新曲である「稲妻」。丁寧に、真摯に、この曲を歌いきった山口隆、次は「さあみなさん、毎朝流れるこの曲で、踊りまくっていただきましょう。時刻は8時になりました、せーの、ラヴィット!」と、いつものセリフから「ヒューマニティ!」に入る。 「あんたが誰のファンか知らねえよ、俺たちはあんたのことを優勝させに来たんだ」と「全員優勝コール」に入り、そこから続いた「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」では、フロアもスタンド席も、もうボコボコ沸いている熱湯のようなリアクションになる。 「Future is Yours」は、山口のMCを経てから入った。「今日は時間ないから長くしゃべれねんだ」とか言いながら、結局結構しゃべっていた中で、特に印象的だったのは、やっぱりこの『ビクターロック祭り』にまつわる話。 「今日はテレビカメラとか入ってから、変なことは言えねえんだ。俺は前に、安月給コールっていうのをやってしまって。あれでビクターの社員は安月給だって、みんな思ってしまって……」。第一回のロック祭り(2013年)で、ビクターの担当者の実名を挙げた上で、お客さんに「安月給! 安月給!」とコールさせていたサンボマスター。観客も、ノリノリでやっていた記憶が蘇る。 5曲目の「できっこないを やらなくちゃ」では、オーディエンスの、すさまじいボリュームの大合唱と、高いジャンプが東京ガーデンシアターに広がった。なんだかすごい光景。間奏で山口、「一足早いですが、今年も1年、ご苦労様でしたー!」と絶叫する。 最後は、10月25日のツアーファイナルの日本武道館でも、本編ラストに演奏された「花束」。曲の最後、木内&近藤洋一(b/cho)が「あなたが花束」とくり返し歌う合間に、山口、「『ビクターロック祭り』で踊ってるきみがそうだろ?」「一所懸命働いてるビクターの社員さんも!」と、絶妙にはさみこんでいく。 もともとフェスやイベント、つまり自分たちのファン以外の人もいっぱいいる場に、やたらと強いバンドだが、今日はその最上級みたいなステージだった。 ちなみに「稲妻」「ヒューマニティ!」「Future is Yours」「花束」がビクターに来てからの曲、「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」「できっこないを やらなくちゃ」が、それ以前の曲である。『ビクターロック祭り』だから気を遣ってそうしたわけではなく、自分たちが今やりたくて、みんなが今聴きたいであろう曲を選んだら、自然にそうなったのだと思う。 Text:兵庫慎司