福島入団3年目、岩村明憲に突如降りかかった「総額1億円」の負債。「自分まで逃げることは絶対したくなかった」
2017年シーズン終了後、経営陣が逃げていなくなったのち、地元の取引先などに球場使用料、用具代、遠征バス代や宿泊代など2年間分の未払いのあることが発覚した。調査を進めるうち、給与未払いなど総額1億円という莫大な金額の負債があるとわかった。そして、地元ファンやスポンサーとして応援してきた企業の不信の目は、「チームの顔」となるべく招致され、経営には一切携わっていなかった監督の岩村に向けられた。 「内情を詳しく知らない方は『福島ホープスは岩村のチーム』と思っていますから、あらぬ誤解をされたり、応援してくれていた企業から敵対視されたり、ファンからも誹謗中傷を受けたりもしました。でも信じてついてきてくれた選手たち、残ってくれたスタッフもいました。みんなの思いを無駄にしたくありませんでしたし、悪いイメージを植え付けられたまま、自分まで福島から逃げてしまうことだけは絶対したくありませんでした」 ■自己資金も投入し、返済義務のない借金を肩代わり 2018年シーズン開始前、岩村は現副社長の高橋柾由美氏と共に、支援者からの寄付以外に個人資金も注ぎ込み、本来は返済義務のない未払い金のうち、およそ半分を支払った。活動継続のためには、道義的にもまずは未払い金を精算する必要があると考えたからだ。 もともと東京で美容サロンなどを経営していた高橋氏は青森出身で、震災後、現地に足を運んで支援活動をしていた。そんな経験もあり、縁あって知り合った岩村の活動に共感して球団経営に協力するようになった。 当初はすべて精算して開幕を迎えたいと考えていたが、すでに翌年の活動費の半分がさまざまな経費の支払いに充てられていた。同シーズンの活動費も確保しなければならなかったため、残りの未払い分は分割払いを申し入れ、受け入れてくれた関係先に支払いの約束をしてどうにか開幕を迎えることができた。 「当時は銀行もお金を貸してくれませんでした。それでも、今後もチームを応援していただきたかった。うちを支援したばかりに取引先の経営が傾いてしまったら、それは自分としても許せないことでした。金額の大小云々ではなく、できる限り頑張って自分たちで返していこうと、支援者など各方面から協力を得ながら返済を続けました」 ■もうやるしかない!「RED」に込めた思い 災難はその後も続いた。旧運営会社代表の本業の会社での税金滞納により、球団にも債権差し押さえの連絡が届いた。それに伴い、福島ホープスはBCリーグへの継続加入が危ぶまれる事態に陥ってしまった。