<3度目の挑戦者・京都国際センバツへ>/下 終盤こそ全力注ぐ /京都
京都国際のモットーは「終盤勝負」。試合序盤で優勢となっても慢心せず、劣勢の展開となっても諦めない。終盤に全力を注ぎ、勝負を決めるというのが、京都国際の野球だ。 実際、チームはこの姿勢で数々の勝利をつかみ取ってきた。2021年の秋季府大会決勝では四回以降3―3の均衡が続いたが、八回表に2点をリードされ、一気に敗色ムードが漂う。しかしその裏、辻井心(じん)主将(2年)の二塁打などで同点に追い付くと、続く森下瑠大(りゅうだい)投手(2年)が適時打を放って勝ち越しに成功、大会初優勝を飾った。 だからこそ、ナインは「逆境こそ燃える」と口をそろえる。自身の強みは「勝負強さ」と断言する辻井主将は「ピンチになると火が付くし、好機で打順が回ってくると楽しいと思える」と打ち明ける。窮地で打席に立ち、笑みを浮かべる辻井主将の姿はナインにとってもおなじみだ。「普通はさばけない球も打てる」と、小牧憲継監督から打者としてのセンスを評価される岩内琉貴也(るきや)選手(2年)も「ピンチでの打席は見せ場だと思っている」と逆境を楽しむ。 なぜ「終盤勝負」に、ここまでこだわるのか。そこには、聖地での痛恨の経験がある。 21年3月のセンバツ2回戦。春夏通じて初出場を果たした甲子園での1回戦で記念すべき初勝利を飾り、チームは勢い付いていた。この試合も九回表を終えて2点リードと、ナインの誰もが勝利を信じて疑わなかった。 だが、その油断が運命を大きく狂わせる。九回裏、相手打線に翻弄(ほんろう)されるがまま3点を奪われ、結果は逆転サヨナラ負け。あまりの出来事に、選手たちは聖地のグラウンドに立ち尽くすほかなかった。 この手痛い教訓を、試合に出て経験した2年生のみならず、チームの誰もが共有している。森下投手は「自分のせいで負け、もっと力を付けたいと思った。あの日から練習での意識が変わり、一球一球に集中するようになった」、辻井主将も「あのサヨナラが大きかった。あそこから、チームが最後まで集中力を切らさない『終盤勝負』にこだわるようになった」と明かす。普段の守備練習でも、ミスをした時には「その一球で負けるんやぞ」「そこが終盤に出るぞ」という声が選手同士で飛び交う。 聖地の土を踏むたびに成長を重ねてきた京都国際ナイン。昨春のセンバツの悔しさを胸に、「終盤勝負」を掲げて挑んだ昨夏は4強まで上り詰めた。「準決勝まで行くと思わず、息切れしてしまった」(小牧監督)夏だったが、頂点にあと一歩まで近づいたナインにとって、全国制覇はもはや遠い夢ではなくなった。この春こそ悲願を果たそうと、3度目の挑戦者たちは今日も練習に汗を流す。【千金良航太郎】 〔京都版〕