犯罪“被害者”苦しめる医療費の負担 政府も被害者支援の強化へ
日テレNEWS NNN
犯罪などの被害者になってしまった場合に発生した医療費を誰が払うのか。多くの被害者が金銭的な負担に悩む中、政府も被害者支援の強化に乗り出しています。 ◇ ◇ 墓前に花を手向ける1人の男性。小西政弘さん、60歳です。 小西政弘さん 「うち命日だったから、4月とか5月で結構人がお参りに来られるから」 今から12年前の2011年4月、生肉のユッケなどを食べた客5人が亡くなった「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件。小西さんは妻と義理の母親を亡くし、長女と長男は一命をとりとめたものの、集中治療室で生死の境をさまよいました。 小西政弘さん 「もう苦しがってすごかったんですよ。もう冷や汗かいてもう苦しい苦しいって言って涙流すような感じで」 突然家族を失った上、子どもの容体も予断を許さない状況の中、さらに小西さんを追い詰めたのが、病院から請求された高額な医療費です。 小西政弘さん 「医療費っていうことをまず考えなかった請求書とか来ますよね。来たときも、なぜ私に来るのかなっていう気持ちがあったのかもしれません。だって、こっち被害者なんだから」 「加害者側がお金が払えない、払えない場合は、被害者側が自分で払わないといけないっていう書類にですね、同意書のサインとハンコを押してくださいって説明を受けたんですよ。私びっくりしました。あなたそれおかしいって思いませんかっていうのは今思ってみれば聞いてみたかったですよね」 -当時は聞かなかった? 小西政弘さん 「そんな余裕なかったです。当時はそれよりも、サインしなかったら治療をやめるんですかっていう、怖さしかなかったですね」 被害者を襲う負担。病院によっては、加害者のいる犯罪行為の治療費を、自動的に高額な自由診療にしているところもあるといいます。 ◇ ◇ この問題については国会でも-。 小泉進次郎 衆院議員 「犯罪によって怪我をした場合は保険は利きません、自己負担ですと自由診療ですと。誤解した対応をしている医療機関が存在している」 こうした指摘をうけ、厚生労働省は改めて医療保険が適用できることを周知したいとしています。 しかし、それでも全額がカバーされる訳ではありません。医療費の自己負担分を加害者に請求することはできますが、加害者側に支払い能力がないなど、実際に賠償されることはほとんどないのが現状です。 小西さんの場合は、当時の医療費については店側が負担した分もあったものの、現在も通院を続ける子どもたちの医療費は自己負担。今後も負担は増え続けます。 小西政弘さん 「何も悪いことをしなくて事件に巻き込まれてですね。命もなくなるようなことがあって、すごい治療もしないといけないことがあって、この現実があるってことを皆さん知らない。もっと知るべきだと私は思います」 小西さんが受けた計り知れない苦痛。 小西政弘さん 「ずっと一緒に年とりたかったですね。ずっと一緒に子供らの成長を見届けたかったですよね」 現在、政府は犯罪被害者への給付金の大幅な拡充など、被害者の経済的負担を減らす検討を進めています。