電気自動車を高性能化する「全固体電池」 どんな特徴があるの?
順調にいけば2025年ごろに量産開始
全固体電池の研究者で、科学技術振興機構で次世代蓄電池開発プロジェクトのリーダーを務める首都大学東京の金村聖志(かなむらきよし)教授(60)は「研究開発面で基礎的なところは出来てきた。あとは実際にどのようにして生産するか」と話します。 産業界では、材料メーカーなど全固体電池の生産にかかわる企業の顔ぶれがまだ固まっていないそうです。金村教授は、関係企業が出そろったのち、生産技術の開発や製品試験を経て、順調にいけば2025年ごろに量産が開始されると予想します。 主な用途とみられるのが自動車分野です。世界では今、フランスや英国が化石燃料で走る自動車の販売を将来禁止する方針を打ち出すなど、電気自動車を含めた化石燃料を使わない次世代自動車への関心が高まりつつあります。
研究では日本が他国をリード
日本政府も、新車販売に占める次世代自動車の割合を、2030年までに2016年の36%から50~70%へと拡大を目指します。高い安全性と長寿命、低コストなどのメリットを持つ全固体電池が実用化されれば、次世代自動車の高性能化と価格の低廉化を促し、普及を促進する可能性があります。 日本の自動車メーカーでは、トヨタ自動車が全固体電池の研究開発に積極的な姿勢を示しています。同社は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援も受けつつ東京工業大学らと全固体電池の研究に取り組んできた結果、2016年3月にはLiイオン電池よりも高性能な全固体電池の開発、2017年7月には安価な固体電解質材料に関する発表を行っています。 金村教授によると、全固体電池の研究では日本が他国をリードしている模様ですが、NEDOによると主要国では、技術開発プロジェクトのテーマに全固体電池が採用されるケースが増えつつあるほか、自動車メーカーや電池メーカーで実用化に向けた取り組みが進んでいるようです。全固体電池の開発競争が今後活発化しそうです。 (取材・文:具志堅浩二)