約1000km「みちのく潮風トレイル」全線開通5周年 「あの町好きや」を原動力に 東日本大震災からの歩みを発信
震災で変わる景色、変わらぬ魅力
コースを歩くと、東日本大震災後の町の歩みも、じかに感じられる。 津波で壊滅的な被害を受けた宮古港。 かつては町と海をへだてるものはなかったが、2021年3月には高さ10.4メートルの防潮堤が完成した。 志賀さんは、この防潮堤で町の風景ががらっと変わったと言う。「海は見えなくなったけれど、また津波が来るかもしれないと思うと、逃げる時間を確保するためには必要なものだ」と話した。 県外から来たハイカーもその変化を感じていた。 震災以降初めて訪れたという青森県からの参加者は、20年ほど前の訪問時と比べ、新しい家が建っているのを見て、「大変だったんだなとあらためて感じた」と語った。 一方、震災後に生まれた子どもたちは「山と浄土ヶ浜が楽しかった!」「しゃべりながら歩いた」「みんなで貝を見つけた」と、この場所が持つ本来の魅力をありのままに満喫していた。 普段は車で通るだけだという参加者も、「階段が大変だったけれど、ここに来たら楽しいだけ」と笑顔を見せた。 自分で歩くからこそ知ることができる魅力。参加者はそれぞれのペースで町を堪能しゴールしていた。
今の沿岸「途切れることなく」発信
5周年を迎えた「みちのく潮風トレイル」はさらに変化しようとしていた。 環境省では「みちのく潮風トレイル」につながる新たなトレイルとして、青森・八戸市から十和田市を結ぶ約120kmのコースを2024年秋から試験的に運用する。 八木哲也環境副大臣は、「途切れることなく次のルートを探す。日本中を一本の線でつなぐことが大事。この地域だけの宝ではなく、世界に発信できればいい」と意気込む。 宮古市ではハイカーたちを増やそうと、この5年間で水や休憩場所などを提供する店「トレイルオアシス」の設置を進めていて、現在50店舗が加盟している。志賀さんの店もその1つだ。 志賀さんは「ここのお店でこんな情報が得られるよ、ここでおいしいものが食べられるよと、私たち民間の人間がハイカーさんに伝えて、ぜひ喜んでほしい」と話す。 「『あの町好きや』と言ってもらえたら僕も笑顔になる」と明るい表情で語った。 震災を機に生まれた「みちのく潮風トレイル」。 今の沿岸をありのままに発信するその道が、交流を広げるきっかけになることが期待されている。 (岩手めんこいテレビ)
岩手めんこいテレビ