踊らないインド映画『ガンジスに還る』に見る 幸福な最期の迎え方とは?
インド映画にもヒューマン・ドラマのトレンドが
── 映画の撮影を終えたいま、「バラナシ」、「ガンジス河」への思いには変化がありましたか? ブティアニ監督:バラナシに行ってみて思ったのは、火葬しているところとか、あれだけ死というものを間近で見ることはないのでね、そういうところが印象に残っています。また街中の喧騒と静寂があいまって隣り合わせじゃないですけど、そういうところが面白かったですね。 ── インド映画はとてもにぎやかな印象があるのですが、現在のトレンドはヒューマン・ドラマのほうに流れてきているのでしょうか? ブティアニ監督:インディペンデントでヒューマン・ドラマを語るというトレンドが出てきていますね。だから全部がボリウッドで、ハリウッドでというものばかりではなくなってきています。それはそれで盛況なんですけどね。
──今後はどんな作品を撮っていきたいと思いますか? ブティアニ監督:とくに決めていませんが、僕の興味の範囲は人間の関係のありよう、人と人との係わり合い、とかです。そうはいっても人間、何があるかはわかりませんので、スーパーヒーローものを創りたいとか突然言い出すかもしれないし。とにかく、「これについて考えたら眠れない」という題材が見つかったらそういうものを題材に映画を撮りたいと思います。 ◇ ◇ 最期の輝きなのだろうか、死を迎える少し前に急に元気になったり、痛みから解放されたりするとはよく聞く。死に向かうダヤのバラナシでの生活もそうだった。夕日が照らす水面も、友人とにこやかに散歩する路地裏も、息子の作った料理が美味しくないと言い放つ姿も、何もかも美しく見えた。父子の間にいつの間にかできていたわだかまりを少しずつほぐしていったのは、ゆったりと流れる時間とガンジスにほかならない。 (取材・文:小杉聡子)
『ガンジスに還る』(英題:HOTEL SALVATION、原題:Mukti Bhawan) 10月27日(土)より、岩波ホールほか全国順次公開、配給:ビターズ・エンド、日本語字幕:藤井美佳、2016年|インド|99分|シネスコ|協力:エア インディア (c)Red Carpet Moving Pictures