ファン感謝デーで、「ちいかわ」のコスプレ姿を披露した小川龍成（カメラ・今成　良輔）

　プロ野球各球団担当記者の推し選手を紹介する「推しえて」第１５回は、今季大躍進したロッテ・小川龍成（２６）。身長１７１センチの守備職人は今季だけでサヨナラを２度決め、カット打法が開眼するなどブレイクした。名字を訓読みにした愛称「ちいかわ」でファンに親しまれる２６歳は、将来的な目標として「満票」でのゴールデン・グラブ賞を掲げた。（取材・構成＝竹内　夏紀） 　確かな手応えで自信を得たのが、３安打１打点でプロ４年目で自身初の猛打賞を飾った５月１日のオリックス戦（ほっともっと神戸）だ。 　「その時期は、ほとんどスタメンではない中で、１軍でトップクラスの投手の田嶋さんに対して、ずっとキャンプからやってきた逆方向と粘りができたのがよかった。（２打席目までに計１９球を投げさせて２安打と）粘って粘って、ヒットを打てて自信になりましたね」 　劇的な瞬間を２度も味わった。５月３１日の阪神戦（ＺＯＺＯ）で、延長１０回２死から押し出し四球を選び、自身初サヨナラ。７月３０日の西武戦（ＺＯＺＯ）では９回２死満塁から意表をつくセーフティーバントで試合を決めた。 　「四球もセーフティーも自分の持ち味をしっかり出そうと思っていたので、そこはどちらも価値あるものだというのは自分の中で思ってます。サヨナラの瞬間は気持ちいいですね～、今年２回ですが、今度は打って決めたいです」 　昨年までプロ３年間の計１０７打席で９安打のみだったが、今季は１１９試合に出場し、２６１打数６３安打、打率２割４分１厘と飛躍した。 　「後半になるにつれて相手の守備位置もどんどん前になり、セーフティー（バント）を警戒されるようになった。そこで今度はサードに強い打球が打てれば、攻撃の幅も広がるし、逆にまたセーフティーが生きたりする。本塁打を打つタイプではないので、球数を投げさせたり、チームへの貢献を意識しています」 　“粘り”が持ち味なだけに、今年からは納豆キャラ「ねばーる君」の曲をモチーフにした応援歌も作られた。さらに名字が大人気アニメの「ちい（小）かわ（川）」と読めることから、ファンに愛称が定着。１７日のファン感謝デーではコスプレ姿も初披露。ファンの間で人気も上がってきた。 　「本当に覚えやすいメロディーですし、皆さんに歌ってもらえて本当にうれしい。（原曲は）知ってます！　僕の打撃のイメージをしていただいたと思うのでうれしい。（『ちいかわ』のコスプレは）似合っていたと思います。アニメはそれまで見たことはなかったので、最初はどういう意味かと思いましたけど、愛称ができたのはうれしいです」 　謙虚な２６歳だが、自慢の内野守備にはこだわりが強い。今季は二塁で４８試合、遊撃で２５試合スタメン出場。７年連続ゴールデン・グラブ賞（ＧＧ）の西武・源田が憧れで、タイトル奪取を夢見る。 　「源田さんには（昨年１月に）１回だけ練習を一緒にさせてもらい、本当にいろんな練習方法も聞け、それが昨年、今年に本当につながっている。学生の頃から、プロに入っても本当に守備だけはとにかく負けたくない思いがずっとある。他の選手がみんなすごいから難しいですけど。いつかはＧＧ賞を取りたいですね。満票で！」 　プロ４年目でうれしい対戦もあった。西武のドラフト１位・武内夏暉は国学院大で３学年下でともにプレーした後輩。９月１６日（ベルーナＤ）に初対戦。新人王最有力の左腕には３打数無安打、１三振と完敗したが、すでにリベンジに燃えている。 　「直接、先輩後輩で対戦したのは多分初めてだと思いますね。打てなかったですけど、ちょっと違った感じというか、楽しい対決というか、気持ちは上がりました。本当にいいピッチャーなので、簡単には打てないですけど、何とか先輩として打ちたかった。来年打てるように頑張りたいですね」 　群馬・前橋育英高時代までを過ごした故郷に恩返しの思いも強い。今年７月には、地元・館林市に自身の後援会が設立。１２月２２日には野球教室とトークショーが開催されるという。 　「地元の方に応援していただいてるのを改めて感じた。野球振興の思いも込めて、今年は地元で自主トレしたいとお願いした。少しでも活性化できればと思っていますし、少しでも、恩返ししたい」 　◆小川　龍成（おがわ・りゅうせい）１９９８年４月５日、群馬・館林市出身。２６歳。小学１年、多々良クラブで野球を始め、中学時代は館林ボーイズでプレー。前橋育英３年時に夏の甲子園出場。国学院大では１年春からベンチ入りし、２年春にベストナイン受賞。３年時には侍ジャパン大学代表。２０２０年ドラフト３位でロッテに入団。１７１センチ、７４キロ。右投左打。今季年俸１２００万円（推定）。