鈴木聡美のモチベ上げ、「おしゃれ」が競泳にも好影響 「最近の息抜きはゲーム実況やアニメ鑑賞」
AERAの連載「2024パリへの道」では、今夏開催されるパリ五輪・パラリンピックでの活躍が期待される各競技のアスリートが登場。これまでの競技人生や、パリ大会へ向けた思いを語ります。今回は日本競泳史上最年長の33歳で五輪代表に内定した鈴木聡美選手のインタビュー後編をお届けします。 【写真】鈴木聡美さんの写真をもっと見る * * * 2大会ぶりに五輪切符を手にした勝因は、プールの外での“変化”にもあった。 「食べ過ぎちゃったり、考えていても食事のバランスが偏ったりだとか、気の緩みによる体重の増減から抜けられなくて大変でした」 ロンドン五輪の時に62~63キロだった体重を61キロ、あわよくば60キロに減量できないか、トレーナーから提案された。 「年齢を重ねるにつれ、体が重いとその分、動かすために必要なエネルギーが増えます。ただ、61キロは軽すぎて動かないんじゃないかと思ったんですけど、減量したら明らかに水泳のパフォーマンスが上がったんです。キレも出て、いい方向に進むようになって」 競技のための減量のはずだったが、トレーナーからは意外なことを言われた。 「やせたら、洋服だっておしゃれもしやすくなるし、いいことずくめじゃない?」 競泳漬けの生活を送る鈴木には意外な提案だった。 「メイクはこんな感じがいいんじゃない?」「髪の毛もショートすぎないボブはどう?」 鈴木は初めて聞いたとき、ちょっと疑問に思ったという。 「トレーニングも教わるんですけど、それよりも、おしゃれの話をよくされたんですよ。一人の大人の女性としての磨きもかけていこうよ、と」 だが、徐々に実感が湧いてきた。 「『こういう服装をやってみよう』と言われて、洋服を買って、着ていくと『いいね!』とか言われたりして。やっぱり褒められるとモチベーションが上がるじゃないですか」
そうするうちに、自然と見た目以外も変わっていった。 「食事の写真を撮ってトレーナーさんに送っているんですけど、ちょっとだけ盛り付け方とか色味を考えるようになりました。昼ご飯が茶色ばかりだったら、夜ご飯では緑を増やすようにしたり」 結果的に競泳に生かされた。 「水泳とは違うものに目を向けることでリフレッシュできたし、水泳を難しく捉えすぎないよう気持ちを持っていけるようになりました。ストイックになりすぎない、モチベーションの上げ方でしたね」 パリ五輪代表選考会では所属するミキハウスのキャラクターをネイルにデザインした。 最近の息抜きも充実しているという。 「もともとインドアなゲームが好きなので、ゲーム実況者さんのユーチューブとか、アニメを見ています。代表合宿の期間中は『葬送のフリーレン』とか『マッシュル』とかの人気作品を見て、競泳代表のキャプテンでもある水沼(尚輝)選手と『この作品見てますか』『見てるよ』と話していました。家に帰ってからは、久々にモンハンでちょっと遊びました」 リオ五輪の前は不安もあったという鈴木だが、今は違う。 「ロンドン五輪当時の、楽しみで仕方がなかった気持ちで臨めたらなと思っています。自信があればあるほど、レース当日でもいい緊張感を持って、臨むことができると思いますし、レース中でも冷静に自己分析、試合運びができると思います」 再びの五輪。目標は? 「(パリ五輪平泳ぎ代表の)青木(玲緒樹)選手ともよく話してるんですけど、お互いに後半が課題だと思うので、前半は30秒4で入って、そこからタイムを落とさずに、後半を34秒台で泳ぐことができれば、日本記録や表彰台、メダル獲得は確実に見えてくると思います」 (編集部・井上有紀子) ※AERA 2024年5月13日号
井上有紀子