『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』が追求した“子ども視点” 軽快なギャグにほっこり
『劇場版 SPY×FAMILY』で強調された“家族愛”と“子どもの力”
ほかにも、本作は徹底して“子どもが求めるもの”を描いている。一つは「家族愛」。アーニャは人の心が読めてしまうという、ある意味残酷な力を持っているが、周囲の心の機微に敏感なのは、実際の子どもにも言えることだ。任務という目的があっても、ロイドはアーニャを心の底から気にかけているし、ヨルもアーニャと“遊んであげる”のではなく、一緒に“遊ぶ”ことを楽しんでいる。本作では、そんな2人のアーニャに対する愛情が強調されていた。 そして、もう一つが「子どもの力」。アーニャやコナンのような大人顔負けの才能を持つ主人公が子どもたちから人気なのは、彼らが“子どもの力”を信じているからに他ならない。大人からすれば「保護者は何をしているんだ」と思ってしまうような子どもだけの冒険シーンも、小さい子にとっては夢があるものだ。アーニャのテレパシーと相棒犬ボンドの予知能力で、大人相手に無双する活躍ぶりは観ていて気持ちがいい。 とはいえ、子ども向けとして作られている=大人が楽しめない、というわけではない。TVシリーズを支えてきたWIT STUDIOとCloverWorksによる渾身の作画、特にドイツのクリスマスマーケット風の背景美術は、いつまでも眺めていたくなる美しさがある。さらに、ロイドの後輩・夜帷や、ヨルの弟ユーリ、アーニャの同級生・ダミアンといった人気キャラクターにもそれぞれ見せ場があり、原作ファンも楽しめる内容になっている。2023年最後のファミリームービー『劇場版 SPY×FAMILY』をぜひ劇場でご覧いただきたい。
花沢香里奈