【社説】ウクライナめぐる米ロ対立の激化、韓国政府は冷静さを保つべき
ウクライナが長い間要求してきた長距離ミサイル「ATACMS」(射程300キロ)のロシア領土内使用を米国が許可したことが事実上確認され、19日で1000日目を迎えた戦争が完全に新たな局面に入った。ロシアでは「第三次世界大戦に向かう非常に大きな一歩」という警告が出ており、来年1月の就任を控えたドナルド・トランプ前大統領の陣営でも似たような趣旨の反発が続いた。北朝鮮の大規模な兵力派兵が二つの核大国である米国とロシア間の対立を引き起こす深刻な危機状況であるだけに、韓国政府は当分、勇み足を慎み、事態の変化を冷静に見守るべきだ。 米国務省のマシュー・ミラー報道官は18日(現地時間)、「政府がATACMSのロシア領土内での使用を許可した」という報道に関する質問に対し、戦争と関連して「繰り返し対立を増幅させてきたのはロシアであり、これには1万1千人の北朝鮮兵がクルスク州でウクライナ軍を相手に戦闘作戦に参加しているという事実が含まれる」と答えた。ジョン・ファイナー大統領副補佐官(国家安全保障担当)も明確には述べなかったが、「米国は状況に合う兵器をウクライナに供与することに成功してきた」と述べた。報道内容を遠まわしに認めたわけだ。ウクライナは、この兵器を現在自国軍が掌握しているロシア領土であるクルスク州の占領地を守るのに使うものとみられる。 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はこれまで、「ATACMSのロシア領土内使用許可」を米国が越えてはならない「レッドライン」(禁止線)にしてきた。今年9月12日にこれは「北大西洋条約機構(NATO)国家がロシアと戦争をするということ(at war with Russia)」を意味すると警告したのに続き、同月25日には「非核国の攻撃も核保有国(米国)の支援があれば共同攻撃とみなす」という核指針改定案を公開した。ロシアのウラジーミル・ジャバロフ上院議員が、米国の措置は第三次世界大戦を引き起こす可能性があるとして、強く反発したのもそのためだ。 このような警告にもかかわらず、米国がこのような決定を下したのは、北朝鮮軍の追加派兵を防ぎ、ウクライナが従来の交渉で有利な立場を占めるよう後押しするためとみられる。ところが、ロシアの強力な対抗が続く可能性もある。トランプ氏の当選後は言及を控えてはいるものの、このような状況で尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が「殺傷力のある兵器の供与」を掲げ、ロシアとウクライナの戦争に巻き込まれるのは、自ら災いを招くような行為だ。米新政権の政策方向が具体化するまで、韓国政府はこれまでの外交戦略を見直し、行動を控えなければならない。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )