南海トラフ巨大地震が発生したらどう動く?最悪の事態を想定しつつ適切な避難行動を!
能登半島地震は決して対岸の火事ではない
2024年元旦、新年の祝賀ムードを切り裂くように能登半島地震が発生。日を追うごとに被害の甚大さが明らかとなり、増え続ける死亡者の数や被災地から届く苦しみの声に心を痛めている人も多いと思います。 被害に遭われた方々には一日でも早く平穏な日常を取り戻していただきたいと願うばかりですが、今回の震災は我々日本人にとって決して対岸の火事ではないことを強く意識しなければならないでしょう。というのも、何年も前から「いつ起きてもおかしくない」と言われている首都直下地震や南海トラフ巨大地震が発生したら、膨大な被害を及ぼすだけに止まらず国家の存亡自体が危うくなり、ほとんどの日本人が直接的もしくは間接的に被害をこうむるからです。 では、首都直下地震や南海トラフ巨大地震が発生したら日本はどのような事態に見舞われるのか? その様子を詳細にシミュレートしているのが、東京都知事政務担当特別秘書・宮地美陽子さんが上梓した『首都防衛』です。本書は「最悪の事態」を想定していることもあり、決して心安らぐような内容ではありませんが、政府が準備している対策活動や個人でやれる避難方法なども紹介しており、防災を考える上でとても頼りになるでしょう。 そんな本書の中から、広大な地域を巻き込むと想定される「南海トラフ巨大地震」が発生した際の「対策」について触れた部分をご紹介したいと思います。
南海トラフ巨大地震で懸念される「津波」に、最新テクノロジーで立ち向かう
南海トラフ巨大地震で最も懸念されるのが「津波」ではないでしょうか。というのも、自然災害で最も多くの犠牲者を出しているのが津波だからです。2011年に起きた東日本大震災の後、全国には「津波避難タワー」が500棟近く建てられたり、「命山」と呼ばれる自然を活かした避難マウンドが設置されたり、企業の高層ビルを避難ビルとして指定したりと、様々な津波対策がとられてきましたが、果たして高齢者がタワーの階段を登りきることはできるのか、大きな揺れに見舞われた人々がそれらの避難場所まで無事にたどり着けるのかどうかは未知数だといいます。 そこで、猛烈な揺れと津波が発生した時の状況を想定して進められているのが、スーパーコンピューター「富岳」や人工知能(AI)を活用した津波シミュレーションと、それを基にしたアプリ開発。具体的には下記のような活用を考えているそうです。 「富岳には約2万件の想定津波シナリオが入り、地図上の3メートル間隔でいつ、どこに、どのくらいの浸水があるのかを数秒で予測する。都市の津波は複雑な動きをする。津波からの避難は沿岸から離れることが原則であるが、都市域での津波の来襲方向は予想外になる。河川を逆流した津波が橋でせき止められたり、陸側からの津波が浸入することもある。さらに、幅員の広い道路を通り、路地を遡上。密集した建物の間を猛烈なスピードで波が迫ってくることも想定しなければならない。スマホがあればリアルタイムで予測を見ることができるうえ、登録した人同士が写真やコメントで危険箇所を知らせ合ったり、逃げ遅れた人がわかったりする仕組みがあるといい、3年後の実装を目指しているという」