「好業績下の株価低迷」 そこから抜け出すための銘柄の選び方とは?
注目されるスズキの動き
さて、そうした角度から、8月中旬で発表が終わった上場企業の1Q決算を洗い直すと、利益進ちょく率の高い注目銘柄が浮かび上がってくる。 利益とひと口に言ったが、株式関係者の注目度が高いのは本業の儲けを示す営業利益。「稼ぐ力」の消長が如実に現れるからだ。 今回の1Q決算で営業利益が会社側の通期見通しに対する進ちょく率が高かった一社に軽自動車メーカーのスズキ(7269)がある。 同社の1Qの連結営業利益はインドを中心とするアジアでの好調に加え、日本、欧州の損益改善効果もあって1164億6400万円(前年同期比36.9%増)と大幅な伸びを記録。通期見通しの3400億円(前期比9.1%減)に対する進ちょく率は34.2%に達した。同社の鈴木修会長は、インド市場の成長を読んで、どこよりも早く軽四輪マーケットに進出した目利きの経営者。ここへきて中国市場から撤退の方向を打ち出すなど、機動的な戦略転換は磨きがかかっている印象がある。 株価は8月7日に7680円高値を付けたあと、調整局面にあったものの、遠からず整理一巡から再び高値にトライしそうな雲行きだ。 もう一社、見逃せないのが、土木鉱山用機械に強い古河機械金属(5715)。ロックドリル部門の収益拡大などから、1Qの連結営業利益は24億6600万円(前年同期比44.4%増)を計上し、通期見通しも65億円から70億円に増額修正。その上方修正値に対する1Qの進ちょく率は35.2%だ。PBR(株価純資産倍率)は0.7倍と、正味の資産価値を3割ほど下回る水準にある。株価は短期的に神経質に振れる場面はあるものの、やや長い目で見れば底値ゾーンに達したと見られ、押し目買い有利の銘柄だろう。
相鉄HD、東洋エンジも好調
このほか、1Qの進ちょく率が38.0%の相鉄ホールディングス(9003%)、同様に39.7%を記録した自動車部品のケーヒン(7251)も要注目。 化学、石油プラントが収益の柱となっている東洋エンジニアリング(6330、95・0%)に至っては1Qの進ちょく率が実に95.0%と、年間の営業利益見通しを1Qだけで粗方稼ぎ出した(1Q実績は19億円。通期見通しは20億円)。当然ながら、通期見通しを期中に増額修正することになろう。 このほか、進ちょく率61.9%の日本金銭機械(6418)も収益上振れの有望候補だ。 主力株はどうだろうか。進ちょく率はまずまずの線をキープしつつ、1Q決算発表時点で早くも通期収益見通しを上方修正した出足好調の銘柄にはデンソー(6902)、ファナック(6954)、アルプス(6770)、日本電産(6594)がある。このうち、日本電産は9月3日、子会社の日本電産シンポが、「ドイツの小型精密減速機メーカー、MSグレスナー社(MS-Graessner GmbH & Co.KG)と、そのグループ関連会社の株式100%を取得した」と発表。ロボット関連マーケットの開拓に弾みをつけようとしている。 (証券ジャーナリスト・駿河一平)